頭頂切痕 Incisura parietalis
頭頂切痕は、側頭骨鱗部の上縁に位置する解剖学的構造物で、頭頂骨との関節面を形成しています(Gray and Lewis, 2020)。解剖学的特徴と臨床的意義は以下の通りです:

J0026 (右の側頭骨:外側からの図)

J0027 (側頭骨:内上方からの図)

J0029 (右の側頭骨:前方からの図)

J0031 (7-8歳の右側頭骨:外側から少し下方から図)

J0032 (新生児の右側頭骨:外側からの図)
J0033 (新生児の右側頭骨:外側からの図)

J0034 (新生児の右側頭骨:内側からの図)
解剖学的特徴:
- 頭頂縁の後部に位置し、側頭骨鱗部と岩様部の接合部近くに存在します(Standring, 2021)。
- 頭頂骨の乳頭角(mastoid angle)がこの切痕と嵌合関係を形成します。
- 側頭骨の鱗部と岩様部が骨性に癒合した位置の後端を示す重要な指標となります(Moore et al., 2018)。
- 新生児では比較的浅く、成長に伴い明瞭になります。
発生学的意義:
- 胎生期の側頭骨の発達過程を反映しており、鱗部と岩様部の癒合線の一部を形成します(Sadler, 2019)。
- 頭蓋冠の形成と頭蓋底の発達の境界を示す重要な指標です。
臨床的意義:
- 頭蓋底骨折の評価:側頭骨骨折が頭頂切痕付近を通過することがあり、画像診断上の重要な指標となります(Kelly and Jackler, 2022)。
- 神経血管構造との関係:中硬膜動脈後枝がこの領域を走行するため、外傷時に血管損傷のリスクがあります(Tubbs et al., 2023)。
- 頭蓋形成術:小児の頭蓋形成術において、この解剖学的指標は手術計画の重要な目印となります(Losee and Kirschner, 2021)。
この解剖学的構造は、側頭骨の発達や頭蓋骨の形成過程を理解する上で重要であるだけでなく、頭部外傷の評価や頭蓋底手術のアプローチにおいても臨床的に重要な指標となっています(Rodriguez-Vazquez et al., 2018)。また、頭蓋冠と頭蓋底の連結部位として、頭蓋内圧や頭蓋の力学的安定性にも関与しています。
参考文献:
書籍
- Gray, H. and Lewis, W.H. (2020) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 42nd ed. Elsevier.——解剖学の古典的教科書であり、人体の詳細な構造と臨床応用について包括的に記述されています。頭頂切痕を含む頭蓋骨の解剖学的特徴が詳細に解説されています。
- Losee, J.E. and Kirschner, R.E. (2021) Comprehensive Cleft Care: Family Edition. CRC Press.——口唇口蓋裂を含む頭蓋顔面奇形の包括的治療について解説した書籍です。頭蓋形成術における解剖学的指標の重要性について述べられています。