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目次(IV. 内臓学)

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精巣は陰嚢内にある2つの腺器官である。その分泌物は高度に特殊化した細胞、すなわち精子Spermien, Samenfädenで構成されている。精巣は側方からやや扁平な形状を呈し、外側面Facies lateralisと内側面Facies medialisの2面、自由縁Margo liberと付着縁である間膜縁Margo mesorchicus、および上端Extremitas capitalisと下端Extremitas caudalisに区分される。

精巣の大きさは縦径4.0~5.5cm、矢状径2.0~3.5cm、横径1.8~2.4cmである。重量は25~30gの範囲にあるが、左右で差異がみられることも珍しくない。(日本人成人の精巣平均値:縦径 右3.52cm・左3.38cm、矢状径 右2.46cm・左2.40cm、横径 右1.68cm・左1.65cm[森岡雄太郎、岡山医誌48年下、昭和11年]。平均重量:右8.39g、左8.45g[稗田五郎、森優、医研究3巻、昭和4年])

精巣上体Epididymis, Nebenhodenは細長い構造で、精巣の間膜縁に沿って位置している。その上端部は精巣上体頭Caput epididymidisと呼ばれ、幅広く鈍端を持ち、精巣上端を超えて上方に伸びている。下端は精巣上体尾Cauda epididymidisと呼ばれ、急激に屈曲して精管へと移行し、そこから上方へ続く。中央部は精巣上体体Corpus epididymidisと呼ばれ、尾部よりも細く、その横断面はほぼ三角形を呈している。

精巣上体の外側面は凸面を形成し、外側稜とともに何も付着していない。前面も頭部と尾部を除いて自由面となっている。精巣と精巣上体を覆う漿膜は腹膜の一部であり、これら2つの器官の上端部と下端部の間の外側面に、深い裂隙状のくぼみを形成して陥入している。これを精巣嚢Bursa testicularisという(図299(19歳男性の精細管))。このくぼみの入口を境界として横走する2本の漿膜ヒダがあり、これらを精巣上体頭ヒダPlica capitis epididymidisと精巣上体尾ヒダPlica caudae epididymidisという。これらのヒダの位置には個体差がある。

精巣の上端には、精巣上体頭に密接して、しばしば小さな円形または楕円形の構造がしっかりと付着している。これを精巣垂(Appendix testis、ungestielte Hydatide:柄のない水胞体)と呼ぶ。また、精巣上体頭にも、より長い柄を持つ構造がしばしば付着しており、これを精巣上体垂(Appendix epididymidis、gestielte Hydatide des Nebenhodens:柄のある水胞体)という(図296(精巣と精巣上体の外側面))。

これらは痕跡器官であり、個体差が顕著で、両方とも欠如することもある。しかし、これらは重要な意義を持つと考えられている。精巣垂は女性の卵管の腹腔端に相当し、精巣上体垂はウォルフ体(Wolffscher Körper:原腎体)の遺残であるとされる。これら2つの付属物に加えて、漿液を含む漿膜の突出部が存在することもあり、その場合は水胞体の数が増加したことになる。

精索内の精巣上体頭付近には、第3の痕跡器官とも言える精巣傍体(Paradidymis、Beihoden:ジラルデ器官[Giraldessches Organ])が存在する。これは結合組織内に埋没しており、時に精巣上体と連結している。白色または黄色を帯びた小塊で、糸玉状に絡み合った盲端の小管から構成されている。その上皮は通常残存している。これは原腎の遺残であり、女性の卵巣傍体に相当する(図297(精巣と精巣上体の内側面))。

精巣の脈管と神経については245頁参照。

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[図296]左の精巣と精巣上体の外側面

陰嚢を収める腔の被膜を切開した状態。(9/10)

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[図297]右の精巣と精巣上体の内側面

陰嚢中隔を除去して剖出したもの。(9/15)

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[図298]37歳男性の精巣の切片図

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[図299]19歳男性の精細管 450倍

精巣の構造 Struktur des Hodens

精子発生 Spermiogenese

成熟した精子の構造 Struktur der reifen Spermien

精巣上体の構造 Struktur des Nebenhodens