https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html

目次(IV. 内臓学)

funalogo.gif


306-307.png

図306(ヒトの精子)、307(精子の構造(模式図))

ヒトの精子は糸状の構造で、長さは58~67μmである。精子は頭部(Kopf)、中間部(Mittelstück)、尾部(Schwanz)の3つの主要部分から構成されている。

頭部は、広い面から見ると卵円形(ほぼ楕円形)で、側面から見ると洋ナシ形である。細くなっている端が頭部の前方である。頭部は極めて薄い細胞質性の被膜に包まれており、この被膜には微小粒体や原線維が存在する(図306(ヒトの精子)、307(精子の構造(模式図)))。頭部後方はドングリの実が殻に収まっているように被膜に包まれ、この被膜の前縁には縁輪(Randreifen)がある。なお、ヒトの精子には頭帽(Kopfkappe)は存在しない。

中間部(Mittelstück)は頚部(Hals)と結合部(Verbindungsstück)から成る。頚部は前方の中心子(頚部小結節Halsknötchen)と均質性の中間物質(Zwischensubstanz)で構成される。この中心子は2つの小粒から成るように見え、そのうちの1つから1本の中心原線維(Zentralfibrille)が伸びている。結合部は前方で円板状の横板(Querscheibe)によって境され、後方の境界は後方中心子の輪状部分(終輪Schlußring)である。この部分の軸を中心原線維が形成し、尾部へと続く。軸糸の周囲には薄い原形質性の被膜があり、その周りをミトコンドリアから成るラセン糸(Spiralfaden)が8~9回巻いている。ラセン糸は微小粒体を含む明るい中間物質中に埋め込まれており、中間物質とともにラセン膜(Spiralhülle)を形成する。ラセン糸の外側には薄い原形質性の鞘が存在する。

尾部(Schwanz)は終輪の後方から始まり、主部(Hauptstück)と終末部(Endstück)の2つの部分から成る。両部とも原線維の集合体である軸糸を有する。軸糸は終末部では露出しているが、主部では被膜に覆われている(図306(ヒトの精子)、307(精子の構造(模式図)))。

上述したのは典型的な精子の形態だが、異型精子も常に存在すると考えられる(Broman, Anat. Anz., 21. Bd., 1902)。Bromanは以下のような変異型を報告している:1. サイズの異常(巨大精子と矮小精子Riesen- und Zwergspermien)、2. 頭部1つに対し尾部が2本(1~2:1000)、3本(1~2:10000)、あるいは4本(極めてまれ)のもの、3. 頭部が2つ以上で尾部が1本ないし2本以上のもの、4. サイズは正常だが形態が異常なもの。