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目次(IV. 内臓学)

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精巣は厚くて丈夫な被膜、すなわち白膜(Tunica albuginea)で包まれている。白膜の外面には精巣の胚上皮(Keimepithel)がある(図298(37歳男性の精巣の切片図))。白膜は白色の線維性膜で、内側は血管に富む疎性結合組織の層に移行している。間膜縁で白膜は内方に突出した厚い高まりを作り、これを精巣縦隔(Mediastinum testis)という。その上部は下部より幅が広いが、間膜縁の一部を占めるのみである(図300(精巣とその被膜の横断面)、8、図301(精巣と精巣上体の縦断面))。精巣縦隔の前縁と側面からは多数の線維性の索と精巣小中隔(Septula testis)と呼ばれる不完全な隔壁が放射状に出ている。これらの外方の端は白膜の内面の様々な箇所に付着している。

精巣の腺実質は軟らかく、帯赤黄色で、しっかりとまとまった細い糸の集団である。この集団は精巣縦隔に尖端を向けた錐体状の多数の小葉から成り立っている。

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図298(37歳男性の精巣の切片図)

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図300(精巣とその被膜の横断面)

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図301(精巣と精巣上体の縦断面)

精巣小葉(Lobuli testis)の数は250~300個である。その大きさはやや不均一で、前内側にあるものはその他の部分のものより長く、幅も広い。精巣小葉はほとんどが蛇行した細い管、すなわち精細管(Tubuli contorti、Samenkanälchen)から成っている。精細管は円形の小管で、直径約140µm(Stieve[1924]によると180~300µm)あり、互いに多くの連結を持っている。また、その始端は盲端で終わっているのが認められる。白膜の下にある精細管の網から多数の小管が出て、蛇行しながら進んで精巣縦隔に達する。その過程で小管は互いに鋭角を成して合流するため、その数が次第に減少する。続いて縦隔内に入り、網状に連結して精巣網(Rete testis、Hodennetz)を形成する。この網を構成する管の直径は24~180µmの範囲である。

精細管の壁は1)複数層の扁平な結合組織細胞、2)繊細な基底膜、3)重層の精上皮(Epithelium seminale)から成り立っている。精上皮には静止期と活動期がある。同一の精巣内でこれら2つの状態が同時に存在し、活動期の様々な段階も同時に観察される。

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図298(37歳男性の精巣の切片図)

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図299(19歳男性の精細管)

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図302(精子発生の模式図)

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図302(精子発生の模式図)

静止期には精上皮は円みを帯びた細胞の複数層から成っている。一方、活動期、すなわち精子発生(Spermiogenese)の間には精上皮が著しく特徴的な分化を遂げる(図298(37歳男性の精巣の切片図)図299(19歳男性の精細管)図302(精子発生の模式図)図303(精母細胞)、304(精子細胞)、305(精子細胞から完成した精子への変形過程))。

上皮細胞の一部は精子が発達する間、これに栄養を与え、また支持する役割を担うようになる。これをセルトリ支持細胞(Sertolische Stützzellen、Fußzellen)という。その他のより大きな部分は精細胞(Samenzellen)に変化する。後者は極めて規則的で活発な有糸分裂を行って増殖し、明確に柱状の配列(精細管の軸に放射状)を示す。

壁に直接接している精細胞は精祖細胞(Spermiogonien、Stammzellen)と呼ばれる。これに続いてその内方にある層を形成するのが精母細胞(Spermiocyten)であり、これは精祖細胞から最初に生じるものである(図299(19歳男性の精細管))。

精母細胞が精娘細胞(Praespermiden、IとII)と精子細胞(Spermiden)を生成する(図302(精子発生の模式図))。

精子細胞はセルトリ細胞の末梢の細胞質に取り込まれ、ここから栄養物を供給される(Peter)。そしてここで完全な精子となる(図299(19歳男性の精細管))。

精巣網では上皮は扁平な上皮細胞と低い円柱上皮細胞から成っている。精巣縦隔の結合組織内には平滑筋の網が広がっている。

精巣小中隔の結合組織は、固有層(Tunica propria)と呼ばれる各精細管の周囲にある間質結合組織と連続している。この結合組織内には血管、リンパ管、神経の他に、脂肪と色素粒子および類結晶を持つ円形の細胞が散在したり、あるいは集団を形成して存在している。これが精巣の間細胞(Zwischenzellen)である(図298(37歳男性の精巣の切片図) )。これは粒子を含む結合組織細胞の一種である。

新鮮な精細管で観察すると、精祖細胞内にも極めて小さな類結晶が認められるが、これはごく少数ではあるがすべての精祖細胞に存在するものである。

K. Peter, Arch. mikr. Anat., 53. Bd., 1898.

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[図300]ヒトの右精巣とその被膜の横断面

精巣下部の横断図を示す。8は精巣縦隔を表す。

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[図301] 精巣と精巣上体の縦断面図(1倍)