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図303(精母細胞)、304(精子細胞)、305(精子細胞から完成した精子への変形過程)
精子細胞が精子に変形する過程は次のようである。精子細胞(図302(精子発生の模式図)、図303(精母細胞)、304(精子細胞)、305(精子細胞から完成した精子への変形過程))は通常の細胞と同様に、細胞体、核、中心小体、中心球(Sphäre)、内網装置(Binnengerüst)から構成される。さらに、原形質内にはミトコンドリアなどの特殊な構造物も含まれている。
核は精子(Spermium)の頭部(Kopf)に、中心球は頭帽(Kopfkappe)に変化する。中心小体は頚部(Hals)、結合部(Verbindungsstück)、軸糸(Achsenfaden)の形成に関与する。細胞体は微小粒体(Mikrosomen)、軸糸、尾部(Schwanz)の被膜を形成する。ミトコンドリアはラセン糸(Spiralfaden)となり、軸糸の頚部周囲に位置する。
円形の精子細胞は以下のように変形し、細長い精子となる(図302(精子発生の模式図)、図303(精母細胞)、304(精子細胞)、305(精子細胞から完成した精子への変形過程))。中心小体は中心球から離れ、2つの中心子に分裂する。核は中心から偏位し、精子細胞内で精細管の縁に近い側へ移動する。
図は精細管の横断面で、I~VIの仕切りは精子発生の様々な段階を示している。ただし、実際にはこのような整然とした像は観察されない。
第Iの仕切り
精細管の壁にはセルトリ細胞と精祖細胞が存在する。第2列には5個の精母細胞があり、さらに図305cの段階にある多数の精子細胞が見られる。
第IIの仕切り
図305dの段階の精子細胞がセルトリ細胞と結合している。
第IIIの仕切り
さらに発達し、図305eの段階にある精子細胞が見られる。精祖細胞と精母細胞は肥大し、次の分裂の準備が整っている。
第IVの仕切り
第IIIの仕切りとほぼ同じ段階だが、やや進行している。
第Vの仕切り
精子細胞はほぼ成熟した精子に変形しており、一部の精母細胞が分裂して精娘細胞と精子細胞を形成している。
第VIの仕切り
頭部、中間部、尾部を持つ成熟精子が見られ、一部は遊離し、一部はまだセルトリ細胞と結合している。また、精母細胞の分裂により多数の精子細胞が形成され、その一部は精子への変形を開始している。
中心球は、隣接する微小粒体とともに精細管の縁に向かった核の前極へと徐々に移動する。最終的に核の上に被さり、核の前部を包む被覆、すなわち頭帽(Kopfkappe)となる。ただし、ヒトの精子にはこの頭帽は観察されない。
核はこの過程で徐々に伸長し、前端が尖った「先端球形」(Spitzkugelform)となる。同時に、核質内のクロマチン塊が互いに接近し、次第に密になる。
このように核は精子の頭部の形態を形成していく。頭部は微小粒体を含む細胞質性の「頭部被膜」(Kopfhülle)に覆われる。
2つの中心子のうち後方のものは、精子細胞の精細管内腔に面した表面へ移動する。ここから1本の鞭毛が伸長し、この鞭毛は後方の中心子と連結して精子尾部の軸糸となる。軸糸は複数の細い原線維から構成される。一方、前方の中心子は核の後極へ移動し、核と強固に結合する。
その後、後方の中心子が2分裂し、1つは輪状に、もう1つは円板状になる。円板状になったものは、伸長を続ける鞭毛とともに核と結合した前方の中心子の近傍へ移動する。そして中間質を介してこの中心子と連結し、成熟精子の頚部の小結節(Halsknötchen)となる(図306(ヒトの精子)、307(精子の構造(模式図)))。この小結節は中間質とともに精子の頚部を形成する。
後方の中心子が前進する際、鞭毛の前部は輪状部分を貫いて細胞体内に進入する。ここで鞭毛の前部は特徴的な3層構造を形成する。すなわち、1. 薄い被膜(精子細胞外の鞭毛部分を包む被膜と連続)、2. 比較的粗大な粒子(ミトコンドリア)からなるラセン糸、3. ラセン糸を外側から包む外被膜である(図306(ヒトの精子)、307(精子の構造(模式図)))。
鞭毛の前部はこれら3層の被膜を持ち、精子の結合部Verbindungsstückと呼ばれる。これは後方の中心子が前後に分かれて発達する2つの構造の間に位置する。具体的には、板状の構造が前方の境界を、輪状の構造が後方の境界を形成する。
鞭毛の結合部より後方の部分も膜で包まれている。鞭毛の後端、つまり終末部Endstückだけは被膜がない(図306(ヒトの精子)、307(精子の構造(模式図)))。
精子細胞の細胞体のうち利用されない部分は、しばらくの間精子の尾部に付着しているが、次第に消失する。おそらく溶解し、精子間の液体の一部となると考えられる。
[図302]精子発生の模式図(Waldeyerの著書「Geschlechtszellen」より)
[図303]精母細胞:核のすぐ左に中心球があり、その中には亜鈴状の中心子が2つ存在する。
[図304]精子細胞:模型図(Meves 1900)
[図305]精子細胞から完成した精子への変形過程(Mevesの模型図)
[図306]ヒトの精子
左の2つはRetziusによる図である。右端はJensenの所見を取り入れている。左端は側面から、右の2つは広い面から見たものである。
[図307]ヒトの精子の構造(模式図)(Stieveによる)。