https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html

片山正輝

目次(V. 神経系)

funalogo.gif


狭義の錐体外路系は主に短い伝導路が上下に連鎖したものから成る(図509(大脳基底核間の伝導路(緑);錐体路(赤);錐体外路(緑)) )。

509.png

図509(大脳基底核間の伝導路(緑);錐体路(赤);錐体外路(緑))

これには次の6つの核が属する:線条体、淡蒼部(淡蒼球)、視床下核、黒核(黒質)、赤核、歯状核である。これらの核すべてに共通する点は、直接の知覚性伝導路を受けず、大脳皮質、視床、四丘板、小脳皮質から興奮を受け取ることである。さらに、これらの核の細胞が多量の鉄を含むことが特徴的である。これら6つの核は太い線維束により相互に結合し、この結合線維束はほぼすべてが往復の両方向に走り、一部は対側にも達する。錐体外路系には長い下行性の伝導路abführende Bahnenがない。例外は赤核脊髄路だが、これも胸髄までしか達しない。運動性の細胞に直接達する錐体路の長い線維と比べると、錐体外路系は短い結合が上下に連鎖して構成されている。すなわち、線条体から淡蒼球へ、さらに視床下核、黒核、赤核、オリーブ核へ達し、オリーブ核から頚髄に至り、次いで索細胞、特に網様核の索細胞を介して運動性の神経細胞に達するのである。

錐体外路系は意志による目的運動とは関係がないが、筋の緊張を適切に保持することおよび様々な筋の協調作用に重要な役割を果たしている。

広義では、錐体外路系は大脳皮質に始まる錐体路以外のもので、脊髄に達するすべての伝導路を包含する。

具体的には、赤核脊髄路、視蓋脊髄路、前庭脊髄路、オリーブ脊髄路、黒核脊髄路、内側縦束がこれに該当する。

Bingは脳の下部中枢から出て下行するこれらの伝導路をFasciculi subcorticospinales(皮質下脊髄束)の名でまとめている。

視床から出る下行性の伝導路:これに属する最も重要なものは、皮質の中心運動領から出て放線冠を下行し、視床の内側核に達する伝導路である。この内側核の細胞から起こる線維は同側の赤核に達し(一部は対側の赤核にも達する)、赤核の大細胞性部分からは新たな下行性線維が出る。これは腹側被蓋交叉(ventrale Haubenkreuzung, Forel)で正中線を越え、赤核脊髄路(モナコフ束、Tractus rubrospinalis, Monakowsches Bündel)となって延髄の外側面に沿って下行する。この経路中、この系統は顔面神経核と三叉神経核に一定の線維を与え、脊髄の側索に移行する。この線維の側枝と終末枝が運動性の前柱細胞に達する(図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図)) )。

赤核の小細胞性部分から出る別の線維群がオリーブ核に達する。これが赤核オリーブ路(Tractus rubroolivaris)であり、さらにオリーブ核から線維が出てオリーブ脊髄路(Tractus olivospinalis)となり、ヘルウェグ三角路を通って頚髄に達する。この線維は運動性の前柱細胞に終わる。同じく赤核の小細胞性部分から出る別の線維が網様核(Nuclei reticulares)に達し、これが赤核網様体路(Tractus rubroreticularis)である。その脊髄への続きは網様体脊髄路(Tractus reticulospinalis)である。

視床を通って下行するもう一つの伝導路も、同じく皮質の中心部にある運動領に始まり、放線冠を下行して視床の内側核に達する。次いでこの核の細胞からはBechterewにより発見された線維束が出る。この線維束は反屈束の線維の内側を通り、内側縦束(後縦束)の外側に接している。四丘体の領域では外側腹方へ進み、次第に正中線に近づいて、橋背部の網様核(図464(橋の横断面II) )に達する。これが視床網様体路(Tractus thalamoreticularis)である。この核自体は網様体脊髄路(Tractus reticulospinalis)を前索基礎束に送り、ここから運動性の前柱細胞に達する(図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図)) )。

405.png

図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図))

458.png

図458(延髄の横断面IV)

464.png

図464(橋の横断面II)

468.png

図468(中脳横断面における皮質延髄路と皮質脊髄路の位置)

470.png

図470(中脳と上丘の横断面II)

504.png

図504(視覚伝導路)

505.png

図505(中枢における嗅覚伝導路とその反射系)

509.png

図509(大脳基底核間の伝導路(緑);錐体路(赤);錐体外路(緑))

皮質の中心部にある運動領から出て、放線冠を下行する第3の視床線維群もやはり視床の内側核に達する。ここから1本の線維束が起こり、まず(視床と四丘体の間の高さで)内側縦束の内側腹方を走り、次いで反屈束の背方に位置する。赤核の高さでは背側被蓋交叉の腹方で、かつ動眼神経根の内側にある。橋の範囲では縫線の近くに位置が変わり、その腹方の線維束が内側毛帯の背内側縁に接するが、背方は内側縦束に達していない。さらにその先の経過でも引き続き縫線に沿っており、この線維束はその場所で延髄に近づくと減弱し、下中心核の領域で完全に消失する。

この伝導路の下方部分はあまり詳しく調べられていないが、その線維が延髄の灰白網様質の細胞(図458(延髄の横断面IV) )と関係を持っていることはほぼ間違いないと言えよう。新たにここで始まる線維は、おそらく網様体脊髄路(Tractus reticulospinalis)となって脊髄の前索基礎束の中を下方に走り、運動性の前柱細胞に達する。

視床(および淡蒼球)においてさらに視床オリーブ路(Tractus thalamoolivaris)の線維の一部が起こり、これは被蓋の中心部(図470(中脳と上丘の横断面II) )を走る。赤核から出る線維群(図509(大脳基底核間の伝導路(緑);錐体路(赤);錐体外路(緑)) )、すなわち赤核オリーブ路(Tractus rubroolivaris)と合わせて、延髄に向かって次第に外側腹方に位置を変え、次いでオリーブ核の外側に達し、この核に終わる。この経路の続きをなすのはオリーブ脊髄路(Tractus olivospinalis)であり、これは前根の出る場所に相当して頚髄の中を下行している。

上丘を通る線維系については、まず中心前回と中心後回から出る線維群を述べる。これらは放線冠の中を内包に向かって進み、次いで大脳脚の外方の領域に至り、最終的に上丘核に達する。

ここで生じる線維束は扇形に広がりながら上丘の中心灰白質を囲み、背側被蓋交叉(マイネルト交叉)を形成した後、視蓋網様体路(Tractus tectoreticularis)となる。この経路は内側縦束を通って延髄に達し、網様質の運動性細胞に終わる。また、視蓋脊髄路(Tractus tectospinalis)として脊髄に至り、前索の内側縁に位置する。この線維は運動性の前柱細胞に終わるが、その途中でいくつかの脳神経(特に三叉神経)の起始核に側枝を与える。

前頭葉の眼球運動中枢領域から発する線維束は、放線冠を通り内包に向かって走行し、上丘に到達する。生理学的研究により、上丘の細胞から続く線維の一部は中脳水道の背側で交叉し、一部は直接内側縦束に入ることが明らかにされている。これらの線維は最終的に動眼筋を支配する諸核に達する。