https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html

目次(III. 脈管系)

funalogo.gif


a) 精巣静脈V. spermatica(=testicularis):精巣静脈は男性の精巣から出て、精索の一部を形成し、鼠径管を通って腹腔に入る。精巣の上端部では、多数の細い精巣静脈Vv. testicularesが間膜縁の白膜から出て、精巣上体からの細い静脈と合流し、複数の細い小幹として上行する。これらの小幹群は蔓状静脈叢Plexus pampiniformisという密な静脈叢を形成する。これらの静脈は徐々に集まって1本または2本の幹となり、腹腔に入ると腹膜に覆われて大腰筋の上を上方に進む(RK600(主要脈管系の分布概観図) )。右精巣静脈は上大静脈に開口し、左精巣静脈は通常、腎静脈に開口する。上方でも2本の幹に分かれている場合、右精巣静脈の1本は多くの場合腎静脈に開き、左側は2本とも腎静脈に入る。

女性では、これに相当するのが卵巣静脈V. ovaricaで、卵巣から来る。これは卵巣門の密な静脈叢から出て、子宮広間膜内のより大きな静脈叢(蔓状静脈叢Plexus pampiniformis)に移行し、そこから卵巣静脈が発生して卵巣動脈に沿って上方に進む。卵巣静脈は男性の精巣静脈と同様に腎静脈や下大静脈に合流する。精巣静脈も卵巣静脈も弁を持ち、特に開口部には必ず存在する。

b) 腎静脈V. renalis:腎静脈は腎門で多数の根が合流してできた1本の太く短い幹で、動脈の前を横断して下大静脈に向かい、直角に合流する(RK600(主要脈管系の分布概観図) )。

左腎静脈はより長く、大動脈の前を横断する。左右の腎静脈はその経路で腎上体静脈を受け取る。左腎静脈には多くの場合、精巣静脈(卵巣静脈)も開口している。

c) 腎上体静脈Vv. suprarenales:腎上体静脈は複数の細い根を持ち、腎上体門から出る。この静脈は左右とも通常1本の短いが太い幹を形成し、左側は腎静脈に注ぎ、稀に横隔膜静脈の1つに入る。右側は多くの場合下大静脈に入るが、しばしば腎静脈にも注ぐ。

d) 肝静脈Vv. hepaticae:肝静脈は下大静脈が肝臓の右縦裂に埋まっている部分で斜めに入る。通常3本あり、完全に肝臓実質に囲まれ、指の太さほどの太い幹で、肝臓の付着部でこの3本が集まって出てくる(RK600(主要脈管系の分布概観図) )。

これらの太い静脈の他に、より細い肝静脈もあり、同様に大静脈に入る。肝静脈は門脈Pfortaderと肝動脈によって肝臓に導かれた血液を受け取る。左側の太い肝静脈は大静脈に開口する直前に静脈管索と連結している。これは(Böttcher, Z. Anat. Entw., 68. Bd., 1923によると)年齢とともに徐々に退化する。

**変異:**下大静脈が下部で大動脈の左側にあり、左腎静脈を受け取った後に大動脈の上を越えて、初めて本来の位置に達することがある。胸部と腹部の内臓が逆位の場合のみ、下大静脈は心臓に達するまで左側を通る。

より頻繁に見られるのは、左右の総腸骨静脈が正常の高さで合流せず、それぞれ分かれたまま大動脈の両側を上方に走り、各側の腎静脈と連結することである。このようにして形成された左側の幹が大動脈の前を越えて右側の幹と合流し、腹腔上部で初めて下大静脈となる。

さらに、下大静脈が右心房に直接開口せず、右縦胸静脈に開口することがあり、その際は右縦胸静脈が著しく太くなる。このような場合、体全体の血液、つまり上半身だけでなく下半身の血液も、腹部内臓の血液を除いてすべて上大静脈を介して右心房に達する。

肝臓は上方に持ち上げられ、その内臓面がよく見えるようになっている。

この場合、肝静脈は下大静脈に入らず、1本の幹となって下大静脈が正常な場合に右心房へ開口する位置に直接達する。稀に左腎静脈が大動脈の後方を通って下大静脈に入ることがある。非常に注目すべき例として、肝静脈の1本が下大静脈にも右心房にも終わらず、右心室に至り、その開口部に弁が見られた例がある。

694.png

[図694門脈とその根の模型図(Quainによる) (1/3)

1. 門脈Vena portae

2. 総腸骨静脈 Vena iliaca communis

3. 内腸骨静脈 Vena iliaca interna