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目次(III. 脈管系)

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門脈は腹腔の主要な静脈で、多数の内臓静脈が合流して形成される。短い経路を経て肝門に入り(RK695(門脈とその根))、肝臓内で枝分かれし、全体に広がる毛細管系を形成する。その後、先に述べた肝静脈となって肝臓から出る。

門脈は他の静脈とは異なり、小さな根が合流して太くなるだけでなく、再び分枝する。門脈の根は胃、腸全体、膵臓、脾臓から来るが、これらを門脈の外根(äußere Wurzeln)という。一方、肝動脈が運んだ血液を集めて門脈の枝に注ぐ肝臓内の多数の細い静脈を内根(innere Wurzeln)と区別する。

幹も枝も、胃に分枝するもの以外は弁を持たない(Hochstetter 1897)。

門脈の幹は長さ6〜8cmで、膵頭の背後で上腸間膜静脈と脾静脈が合流して始まり、斜め右上方に向かって肝門に至る(図663)。

その経路では、幹の前方左側に肝動脈、右側に総胆管がある。これらが幹をほぼ完全に前方から覆っている。これら3つは疎性結合組織によってまとめられ肝臓の索(Leberstrang)となり、肝神経叢の神経や多数のリンパ管に囲まれ、小網の右方部分、すなわち肝十二指腸部内に包まれている。非常に稀だが、門脈の幹が十二指腸の前方を走ることがある(Pernkopf, Z. Anat. Entw., 97. Bd., 1923)。肝門に入る際、門脈の幹は広がって門脈洞(Sinus venae portae)を形成し、そこから非常に鈍角をなして2本の主枝が出ている。

この2本の主枝は肝門の右端付近で幹から分岐する。右枝(Ramus dexter)はすぐに肝臓の右葉実質内に入り、そこで多数の枝に分かれ、それぞれが1本の肝動脈の枝と胆管の枝に伴われて進む。左枝(Ramus sinister)は右枝より細いが長く、肝臓の横溝の大部分を通過し、方形葉と尾状葉に枝を与えた後、肝臓の左葉に入ってそこで広がる。

門脈の主根は胃冠状静脈V. coronaria ventriculi、脾静脈V. lienalis、上腸間膜静脈V. mesenterica cranialis、下腸間膜静脈V. mesenterica caudalisである。胆嚢静脈V. vesicae felleaeは門脈の幹に入るか、または門脈の右枝に合流する。

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[図695門脈とその根(1/5)

肝臓と胃は上方に折り返し、十二指腸の初めの部分と横行結腸は切り取ってある。1 肝臓左葉、2 方形葉、3 右葉、4 胆嚢、5 胃、6 十二指腸、7 空腸と回腸、8 盲腸、9 上行結腸、10 下行結腸、11 S状結腸、12 膀胱、13 脾臓と脾静脈枝、14 膵臓と膵静脈、15 上腸間膜静脈、16 下腸間膜静脈、17 短胃静脈、18 脾静脈(左胃大網静脈が上方から、下腸間膜静脈が下方から開口している部位)、19 胃冠状静脈、20 門脈

a) 胃冠状静脈Vena coronaria ventriculi:胃冠状静脈は胃の小弯に沿い、左胃動脈と平行して噴門に至り、脊柱の前を右横に向かって門脈の幹に入る。ときに脾静脈にも合流する(RK694(門脈とその根の模型図)RK695(門脈とその根))。

b) 上腸間膜静脈V. mesenterica cranialis(RK694(門脈とその根の模型図)RK695(門脈とその根)):この静脈幹は上腸間膜動脈の右側にある。その根の分布と走行は動脈の枝と同じ関係を保つ。この静脈は小腸や上行・横行結腸を源とする小腸静脈Vv. intestinales(回腸と空腸からくる)、回結腸静脈V. iliocolica、右結腸静脈Vv. colicae dextrae、中結腸静脈V. colica mediaから構成される。形成された幹は右上方に進み、十二指腸下部の前面を越えて膵臓の後面に至る。そこで膵十二指腸静脈Vv. pancreaticoduodenales、少数の膵静脈Vv. pancreaticae、十二指腸静脈Vv. duodenalesを受け取り、時に下腸間膜静脈も合流する。その後、脾静脈と合する。それより前に右胃大網静脈V. gastroepiploica dextraが合流することも多い。他の場合、右胃大網静脈が脾静脈に入るか、右結腸静脈の1本と合して胃結腸静脈V. gastrocolicaを形成する。

c) 下腸間膜静脈V. mesenterica caudalis(RK694(門脈とその根の模型図)RK695(門脈とその根)):これは同名の動脈と全く一致した関係を示す。下方では上直腸静脈V. rectalis cranialisを介して広範な直腸静脈叢と連続する。骨盤から緩やかに左に凸の弓を描いて上方に進み、S状結腸静脈Vv. sigmoideaeと複数の左結腸静脈Vv. colicae sinistraeを受け取り、個体差のある位置で膵臓の後ろに入る。多くの場合、この静脈は脾静脈と合する。時に下腸間膜静脈が門脈の始まりで門脈に入るか、上腸間膜静脈に開口することもある。

d) 脾静脈V. lienalis(RK694(門脈とその根の模型図)):脾静脈は通常非常に太く、脾臓の血液、胃の大部分や膵臓からの血液の一部、十二指腸からの血液を門脈に導く。また下腸間膜静脈と合することで、下行結腸と直腸の血液も門脈に導く。

脾静脈は脾門から別々に出る少数の根で始まり、これらの根がすぐに1本の幹を形成する。次いでこの幹は数本の短胃静脈Vv. gastricae brevesを受け取り、左胃大網静脈V. gastroepiploica sinistra、複数の膵静脈Vv. pancreaticae、十二指腸静脈Vv. duodenalesを合わせる。膵臓の後ろで脾動脈の下方を左から右に進み、その間に下腸間膜静脈を受け取る。最後に膵頭の後ろでほぼ直角に上腸間膜静脈と合する。

胎生期における臍静脈V. umbilicalisと門脈および下大静脈との重要な関係については後述するが、ここでは臍静脈の内腔が開存したまま残る重要な場合について述べる。

臍静脈V. umbilicalisは胎生期に酸素と栄養素を含む血液を胎盤から導くが、胎児期のみ必要で、出産後は他の余剰血管と同様の運命をたどる。その変化は結紮・遮断された血管と同様である。閉鎖(閉塞 Obliteration)は末端部、すなわち隣接する静脈部分でのみ完全に起こり、より中心部では大小の細い管が残存するのが通常である。この管は個体の生存中、正常時には求心性に血液を通す(P. Baumgarten)。残存管内の血流は、隣接部で始まる複数の細い静脈枝に由来し、主に臍静脈の中1/3で注ぐが、様々な高さでも残存管に入る。この吻合に関して、臍静脈が完全に腹壁の静脈に基づくこと(結論参照)を理解する必要がある。この臍傍静脈枝adumbilikale Venenästeの中で最も太く、必ず存在するものは胎児のバロー静脈Burrowsche Veneと呼ばれる。全例の約1/4~1/3でバロー静脈が直接臍静脈に開かず、肝臓の門脈系に注ぐ。これをサッペイ副臍静脈Sappeysche Paraumbilikalveneと呼ぶ。しかしこの場合も臍静脈に枝がないわけではなく、バウムガルテンの介在静脈Schaltvenen von Baumgartenと呼ばれる細い臍傍静脈の1つが臍静脈に開口する。不完全閉塞した臍静脈の残存管の広さと長さは、流入する枝の太さ、数、開口部位により決まる。後年でも様々な太さのゾンデを6~10 cm通せることがあり、一方で毛髪程度の細さの管のこともある。例外的に臍静脈に枝が全く開いていない場合、完全に癒着する。

肝臓の循環障害、例えば肝線維増殖(肝硬変)などの際には、上述の残存管が拡張する。その程度は肝変性の強さと、残存管の元々の広さに関係する。そのため、同程度の病変でも、非常に細いこともあれば、ガチョウの羽軸や人指程の太さの血管が臍静脈索の中心に認められることもある。残存管が拡張する際には、その側枝(バロー静脈、介在静脈)や、これらの側枝と連続する臍静脈索、肝鎌状間膜内のすべての静脈網も拡張し、前腹壁の静脈も拡張して、"メドゥーサの頭Caput Medusae"と呼ばれる静脈群を形成することがある。残存管が狭い場合、サッペイの副臍静脈が主な側副路となり、うっ血した門脈血を腹壁静脈を通じて導出しようとする。His, Arch. Anat, 1895, Suppl.-Bd., S.150参照。