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目次(IV. 内臓学)

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気管Luftröhreは体の正中線上にあり、頚部と胸部に分けられる。第6頚椎体から始まるが、男性ではその下縁から、女性では上縁の高さから始まる。胸腔内では第4胸椎の高さに気管分岐部Bifurcatio tracheaeがあり、そこで左の気管支Bronchus dexter et sinisterという2本のより細い管に分かれ、互いに離れながら右と左の肺に達する。分岐部で大動脈弓と交差する(図212(肺根:後方から剖出したもの)、213(呼吸細気管支から肺胞管への移行部の模型図)、214(ネコの肺胞壁における呼吸上皮と毛細血管の模型図))。気管の長さは成人で9~15 cm、幅は1.5~2.7 cmの範囲で変動する。(日本人の気管の平均長は、生体造影法によると呼気時では男性12.0cm、女性10.0cm、吸気時では男性13.5cm、女性11.0cmである。また太さは呼気時で男性1.3~2.0cm、女性1.0~1.5 cm、吸気時で男性1.5~2.2 cm、女性1.3~1.8 cmである[前田清一郎、東京医雑誌45巻、昭和6年])

気管は中央部に向かってやや太くなり、上下の両端に近づくと比較的細くなる。一般に男性の気管は女性より太い。前方と側方は円筒形で固く丈夫であり、その壁内に弓状の気管軟骨が含まれている。この弓状軟骨は後方が開いたままで、つまり気管の後壁には軟骨の基礎がない。そのため、この部分は膜様で平らであり、膜性壁Paries membranaceusと呼ばれる。

局所解剖図223(胸腔の内臓の位置 I)図224(胸腔の内臓の位置II)図226(胸腔の内臓の位置 III)):気管の後方には食道があり、膜性壁をわずかに押し出している(図088(咽頭と食道の背面からの剖出図))。食道は気管の頚部では気管の左縁を外側に越え、下方では左気管支と交差する。第2から第5気管軟骨の前方には甲状腺の峡がある。甲状腺の左右両葉は気管上部の側面を包んでいる。

甲状腺に錐体葉がある場合、これは気管上部を越えて、主に喉頭の左側面上を正中線に沿って上方に至る。小児では胸骨と気管の間によく発達した胸腺が広がっている。両側の胸骨舌骨筋と胸骨甲状筋が気管の前面を覆っているが、左右の胸骨甲状筋の間に細長い菱形の空隙があり、そこでは頚筋膜のみが気管を覆っている。また、最下甲状腺静脈が気管の前を走行している(図223(胸腔の内臓の位置 I))。気管分岐部の上方では左腕頭静脈、腕頭動脈、左総頚動脈が気管上を通過する。さらに上方では左右の総頚動脈が気管に沿っている。気管と食道の間の溝、特に左側の溝内を下喉頭神経が通る。気管は左右の胸膜嚢に挟まれ、縦隔の前部と後部の境界に位置する。その際、脊柱の湾曲に沿ってやや後方に進んでいる。

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[図202]喉頭、気管、気管支およびその主要分枝の前面図(9/10)

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[図203]気管とその分枝(死体)

横隔膜は、空気で満たされた肺によって下方に押し下げられている。レントゲン写真。背臥位(Haßelwanderによる)。

[図203a]気管分枝の模型図

区域気管支(Segmentbronchen)の名称は、1949年ロンドンで決定された(Dennig, Lehrb. inn. Med., Thieme Stuttgart, 1954より)。

右と左の気管支 Bronchus dexter et Bronchus slnister, rechter und linker Luftröhrenast

気管の構成 Aufbau der Luftröhre