橈側皮静脈は手から肩に至る腕の表面の静脈です。初期における上肢の辺縁静脈から発生し、尺側皮静脈と共に存在します。手背静脈網の橈側部から始まり、前腕の橈側縁を上行し、前腕の前面・後面から静脈を受け取ります。次に、肘窩の外側縁を経由し、上腕二頭筋の外側の外側二頭筋溝を上行します。その後、大胸筋と三角筋の間の溝を通り、鎖骨の直下で深層に入り、腋窩静脈に注ぎ込みます。肘窩の近くでは、外側前皮神経と一緒に走ります。通常、この静脈は静脈注射や採血に使用されます。Cephalicaはギリシャ語のkephale(頭部)の形容詞形で、V. cephalicaは「頭の静脈」を意味します。なぜ腕の皮静脈にこの名前が付けられたのかは明らかではありませんが、一説によれば、かつて橈側皮静脈から血液を採取すると(これを瀉血と言います)、痛みが治まると信じられていたからだと言われています。
『日本人のからだ(大久保真人 2000)』によると
橈側皮静脈は、その位置関係や開口部位などを考慮した分類が試みられており、その基準は一定ではないため、従来の報告例をまとめることは難しいです。他の静脈との関係を除外して整理すると、橈側皮静脈は橈骨茎状突起より近位で前腕屈側に出て肘窩に達し、肘正中皮静脈を出した後に三角筋胸筋三角を経て腋窩静脈または鎖骨下静脈に開口します(表70)。その際、肘部付近で島を形成したり、手背の静脈から起こる副橈側皮静脈を有することがあります。性差や側差は見られません。
橈側皮静脈がどこに開口するか、開口部位についての観察例は少ないです。これは、多くの観察が生体の表面観察によるため、その正確さに欠けると考えられます。稗田(1927)が成人100肢を解剖調査した結果では、腋窩静脈に入る例が圧倒的に多かったです。しかし、他の皮静脈と同様に、橈側皮静脈も走行、開口部位、他の静脈との相互関係を考慮すれば、各人各肢が変異例であると言っても過言ではありません。参考のために、以下に変異の一部を例示します。