膝窩動脈 Arteria poplitea

J0600 (右大腿の動脈、背面図)

J0601 (右下腿の動脈:背側からの図)

J0966 (右下腿の筋神経:後方からの図)
膝窩動脈は、下肢の血液供給において中心的役割を果たす重要な動脈です。その解剖学的特徴と臨床的意義について詳述します(Gray and Standring, 2016; Drake et al., 2020):
解剖学的特徴
- 起始部:大腿動脈の直接の延長として、内転筋管(ハンター管)の裂孔を通過した後に始まります(Moore et al., 2018)
- 走行:膝窩窩(膝窩)内を通り、膝関節後面の中央を遠位に向かって下行します(Netter, 2019)
- 位置関係:浅層から深層に向かって、脂肪組織、膝窩筋膜、膝窩静脈、脛骨神経に覆われています(Sinnatamby, 2011)
- 終末部:膝窩筋の下縁(ヒラメ筋弓)付近で前脛骨動脈と後脛骨動脈に分岐して終わります(Standring, 2021)
主要分枝
- 膝関節分枝:上外側・上内側・下外側・下内側・中膝動脈(5本)が膝関節周囲に豊富な側副血行路を形成(Williams et al., 2020)
- 筋枝:膝窩筋、腓腹筋、足底筋などの周囲筋群へ分布(Loukas et al., 2013)
- 末梢分枝:前脛骨動脈と後脛骨動脈(後者はさらに腓骨動脈を分枝)(Drake et al., 2020)
臨床的意義
膝窩動脈は、その解剖学的位置から様々な病態と関連しています(Ouriel, 2008; Kim et al., 2014):
- 膝窩動脈瘤:全末梢動脈瘤の中で最も頻度が高く、血栓塞栓症のリスクがあります(Ravn et al., 2008)
- 膝窩動脈捕捉症候群:筋肉や線維性索状物による動脈圧迫で、若年者の間欠性跛行の原因となります(Turnipseed, 2002)
- 外傷性損傷:膝関節脱臼や骨折に伴って損傷することがあり、下肢虚血の緊急事態を引き起こす可能性があります(Green and Allen, 2015)
- アテローム性動脈硬化症:閉塞性動脈疾患の好発部位の一つです(McDermott et al., 2010)
解剖学的変異も臨床的に重要であり、高位分岐(内転筋管内での前後脛骨動脈への早期分岐)や、走行異常などが報告されています(Kim et al., 2009; Day and Orme, 2006)。これらの変異は下肢の血行再建術や血管造影時に注意を要します。膝窩動脈周囲の豊富な側副血行路は、主幹動脈閉塞時の下肢血流維持に重要な役割を果たします(Yamada et al., 2006)。
参考文献