



起始と走行
橈骨動脈の浅掌枝は、橈骨動脈の末梢枝の一つで、橈骨動脈の主幹が手根部の橈側(外側)を回って手背へ向かう箇所から分岐します(Spalteholz, 1923; Rauber & Kopsch, 1987)。この分岐点は通常、橈骨茎状突起のレベル付近に位置します。
経路のバリエーション
浅掌枝は個体差が大きく、次のいずれかの経路をたどります(Gray, 2021):
浅掌動脈弓との関係
橈骨動脈の浅掌枝は、尺骨動脈から続く浅掌動脈弓の橈側部分を補完する役割を果たします。ただし、浅掌動脈弓の形成において主要な血管供給は尺骨動脈であり、橈骨動脈の浅掌枝の寄与は副次的です(Moore et al., 2018)。個体によっては浅掌枝が細く、浅掌動脈弓への寄与が小さい場合もあります。
分布領域
浅掌枝は母指球の筋群および手掌の橈側皮膚へ血液を供給します。特に母指の掌側面への血行に関与し、母指の感覚および運動機能の維持に重要です。
手の血管系の解剖学的バリエーション
手掌部の動脈系は個体差が非常に大きく、浅掌枝の発達程度や走行パターンは人によって異なります。外科手術や血管造影を行う際には、この解剖学的バリエーションを十分に考慮する必要があります(Coleman & Anson, 1961)。
橈骨動脈カテーテル検査との関連
橈骨動脈は心臓カテーテル検査や動脈血採血の際に頻繁に穿刺される部位です。浅掌枝は橈骨動脈の重要な分枝であり、穿刺部位や手技によっては浅掌枝の血流に影響を及ぼす可能性があります。特に橈骨動脈閉塞が生じた場合、浅掌枝を介した側副血行路が手の血流維持に重要となります(Barbeau et al., 2004)。
手掌部の外傷と血管損傷
手掌部や母指球の外傷では、浅掌枝が損傷される可能性があります。特に鋭的外傷(刃物による切創など)では血管が切断され、出血や虚血を引き起こすことがあります。早期の血管修復が母指の機能回復に重要です(Green et al., 2017)。