腋窩動脈

腋窩動脈は上肢の動脈の本幹であり、鎖骨下動脈より外側の第1肋骨の縁から始まり、大胸筋または大円筋の停止腱の部分で上腕動脈に移行します。この動脈は通常3つの部位に分けられます。第1部は小胸筋の上縁より上方に位置し、前面は大胸筋鎖骨部に覆われ、後方および外側は腕神経叢に接しています。第2部は小胸筋の後面に位置し、腕神経叢を貫いてその後面、内側面、外側面にそれぞれ後神経束、内側神経束、外側神経束に接しています。第3部は小胸筋の下縁より下方に位置し、前面は正中神経に、外側は筋皮神経と烏口腕筋に、内側は尺骨神経を介して腋窩静脈に、後面は橈骨神経と腋窩神経を介して肩甲下筋と広背筋の停止腱に接しています。腋窩動脈には以下の枝があります:①肩甲下肢、②最上胸動脈、③胸肩峰動脈、④外側胸動脈、⑤肩甲下動脈、⑥前上腕回旋動脈、⑦後上腕回旋動脈。

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J0557 (頚部浅層の動脈:右前方からの図)

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J0572 (右の鎖骨下動脈:右側からの図)

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J0574 (右腋窩の動脈、正面図)

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J0609 (頚部の深部静脈:右側からの図)

日本人のからだ(児玉公道 2000)によると

上肢の動脈の特徴の一つは、腕神経叢を斜めに貫く現象で、通常は第7頚神経と第8頚神経の間を貫きます。しかし、図49表24に示されているように、様々な形が存在します。理論的には、すべての分節間に出現する可能性がありますが、第5頚神経と第6頚神経の間や、第4頚神経と第5頚神経の間を貫く例は見られません。また、単一の神経束を貫く例もあり、特に第7頚神経や第8頚神経で比較的多く見られ、第1胸神経でも観察されます。所謂足立のC型(Adachi, 1928 a)では、一見腕神経叢を貫かないように見えますが、第1胸神経と第2胸神経の間を貫いていると考えられます。これらの中には、内側上腕皮神経の上や第2胸神経の肋間上腕神経の上で神経叢を貫く例があります。相澤ら(1996)も同様のデータを提供しています。

したがって、腋窩動脈が腕神経叢を貫く位置は多様であり、これは神経叢の周囲に動脈の輪が形成され、その中のどの部分が腕を灌流する本幹になるかによって決まると考えられます。しかし、神経分節の変化や節間動脈である鎖骨下動脈の変異を考慮に入れて考察する必要があります。

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図49 腋窩動脈が腕神経叢を貫く高さ

図049 腋窩動脈が腕神経叢を貫く高さ

C5-8: 頸神経の分節、Th1-2: 胸神経の分節、○: 腋窩動脈