頚動脈小体 Glomus caroticum

RK634(頸動脈小体:全体像)

RK637(頚動脈糸球)、638(クロム親和性細胞)

J0763 (甲状腺、近隣の臓器に対する位置:背面からの図)
解剖学的構造
- 頚動脈小体は総頚動脈分岐部の後内側、内頚動脈と外頚動脈の間に位置する卵円形の化学受容器である(Standring, 2020; Moore et al., 2018)。
- 直径2-6mm、重量約10-15mgの小さな結節状構造で、豊富な血管網を有し、単位重量あたりの血流量は体内で最も多い器官の一つである(Kumar and Prabhakar, 2012)。
- Ⅰ型細胞(グロムス細胞)とⅡ型細胞(支持細胞)から構成され、Ⅰ型細胞は神経堤由来のクロム親和性細胞で、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質を含有する(Nurse and Piskuric, 2013)。
- Ⅱ型細胞はⅠ型細胞を取り囲む支持細胞であり、グリア細胞に類似した形態を示す(López-Barneo et al., 2016)。
- 微細構造として、細胞群は類洞様の毛細血管網で囲まれ、神経終末と密接に接触している(Kondo, 2018)。
生理学的機能
- 動脈血の酸素分圧(PaO₂)、二酸化炭素分圧(PaCO₂)、pH、温度を感知する末梢性化学受容器として機能する(Guyton and Hall, 2021)。
- 低酸素状態(PaO₂ < 60 mmHg)で活性化し、舌咽神経を介して延髄の呼吸中枢に信号を送り、換気量を増加させる(Gonzalez et al., 2014)。
- 高炭酸ガス血症やアシドーシスにも反応し、呼吸および循環の恒常性維持に重要な役割を果たす(Kumar and Prabhakar, 2012)。
- 急性低酸素に対する即座の反応だけでなく、慢性低酸素への長期適応にも関与する(López-Barneo et al., 2016)。
神経支配と血管供給
- 求心性神経支配は主に舌咽神経(第IX脳神経)の頚動脈洞神経を介し、一部は迷走神経(第X脳神経)からも受ける(Moore et al., 2018)。
- 遠心性神経支配は上頚神経節からの交感神経線維による(Standring, 2020)。
- 血液供給は主に外頚動脈の分枝である上甲状腺動脈または後頭動脈から受け、極めて豊富な血管網を形成する(Kondo, 2018)。
臨床的意義
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、睡眠時無呼吸症候群などの慢性低酸素状態では頚動脈小体が肥大し、過敏性が増大する(Gonzalez et al., 2014)。
- 高地居住者では頚動脈小体の容積が増加し、低酸素環境への適応機構として機能する(López-Barneo et al., 2016)。