筋突起(披裂軟骨の)Processus muscularis (Cartilaginis arytenoideae)

J0733 (右の披裂軟骨:前外側方からの図)

J0734 (右の披裂軟骨:後内側方からの図)

J0737 (喉頭とその靭帯:右側からの図)

J0739 (内側の喉頭筋:右側からの図)

J0740 (喉頭筋:後方からの図)

J0741 (声帯の高さでの喉頭の断面、上方からの図)
定義と形態
筋突起(Processus muscularis)は、披裂軟骨の底部から外側および後方に突出する円錐形の突起である。この構造は、喉頭の機能において重要な役割を担う。
機能的役割
筋突起は声帯の開閉運動の中心的な役割を果たす。筋突起の動きにより披裂軟骨が回転し、声帯の位置と張力が精密に調整される。この運動は、発声および呼吸の両方において不可欠である。
付着筋肉
- 後輪状披裂筋(Musculus cricoarytenoideus posterior): 喉頭における唯一の声門開大筋として機能する。この筋肉は筋突起を引っ張ることにより披裂軟骨を外側に回転させ、声帯を開く作用を持つ。
- 外側輪状披裂筋(Musculus cricoarytenoideus lateralis): 筋突起を前内方に引くことで披裂軟骨を内側に回転させ、声帯を閉じる働きをする。
解剖学的位置関係
筋突起は披裂軟骨の声帯突起とペアを成しており、これら二つの突起のレバーアーム作用により、わずかな筋収縮で繊細な声帯の動きが可能となる。この機構は、音声の微細な調整を可能にする重要な解剖学的特徴である。
臨床的意義
- 反回神経麻痺: 反回神経は筋突起に付着する筋肉を支配しており、麻痺が生じると声帯の動きが制限され、嗄声(かすれ声)や誤嚥のリスクが高まる。
- 声帯麻痺: 筋突起周囲の関節が固着すると声帯運動障害を引き起こし、発声困難や呼吸障害を生じることがある。
- 気管挿管時の注意点: 挿管操作による筋突起への過度の圧力は、披裂軟骨脱臼や声帯損傷のリスクを高めるため、慎重な手技が求められる。
発生学的考察
筋突起は胎生期の第6咽頭弓由来の軟骨から発生し、出生後も徐々に成長を続ける。この発生過程の理解は、先天性喉頭奇形の診断において重要である。
参考文献
- Dworkin, J.P. and Meleca, R.J. (1997) Vocal Pathologies: Diagnosis, Treatment, and Case Studies. Singular Publishing Group. → 声帯病理学の診断と治療に関する包括的なテキスト
- Gray, H. and Lewis, W.H. (2020) Gray's Anatomy. 41st ed. Elsevier. → 解剖学の古典的標準教科書の最新版