右板・左板(甲状軟骨の)Lamina cartilaginis thyroideae dextra/sinistra

J0680 (咽頭と喉頭の筋:後方から見た図)

J0729 (甲状軟骨と輪状軟骨:右方からの図)

J0730 (甲状軟骨と輪状軟骨:前方からの図)

J0738 (喉頭筋:右側からの図)

J0739 (内側の喉頭筋:右側からの図)

J0741 (声帯の高さでの喉頭の断面、上方からの図)

J0745 (喉頭の前頭断、前半部:後方からの図)

J0746 (喉頭の前部を通る前向きの切断図)
基本構造と組織学的特徴
甲状軟骨板(lamina of thyroid cartilage)は、甲状軟骨の主要構成部分で、左右一対の四角形の硝子軟骨板からなります(Gray, 2020; Standring et al., 2023)。各板は約4-5cmの高さと3-4cmの幅を持ち、思春期以降は男性で特に肥厚します(Moore et al., 2022)。組織学的には、典型的な硝子軟骨の構造を示し、軟骨細胞が豊富な細胞外マトリックスに埋め込まれています(Ross and Pawlina, 2020)。
形態学的特徴と性差
- 前方正中で左右の板が合流し、甲状軟骨前角(laryngeal prominence)を形成します。この角度は男性では約90度(80-95度)、女性ではより鈍角の約120度(110-130度)であり、これが喉頭隆起(アダムのリンゴ)の性的二形を生み出します(Standring et al., 2023; Netter, 2023)
- 外側面(facies externa)は僅かに凹面を呈し、斜線(linea obliqua)が上後方から下前方に走行します(Gray, 2020)
- 内側面(facies interna)は平滑で、喉頭粘膜に面しています(Moore et al., 2022)
- 上縁(margo superior)は前方で甲状切痕(incisura thyroidea superior)により中断され、後方で上角(cornu superius)に延長します
- 上角は長さ約2-3cmで、甲状舌骨靱帯(ligamentum thyrohyoideum laterale)により舌骨大角と連結します(Standring et al., 2023)
- 下角(cornu inferius)は短く内側に向かい、輪状甲状関節(articulatio cricothyroidea)を形成し、喉頭の可動性を可能にします(Drake et al., 2020)
筋肉・靱帯付着部位
- 外側面の斜線には、上方から下咽頭収縮筋(musculus constrictor pharyngis inferior)、下方に胸骨甲状筋(musculus sternothyroideus)と甲状舌骨筋(musculus thyrohyoideus)が付着します(Netter, 2023; Standring et al., 2023)
- 内側面の前下部には、甲状披裂筋(musculus thyroarytenoideus)および声帯靱帯(ligamentum vocale)が付着し、発声機構の中核を担います(Gray, 2020)
- 前正中部には、輪状甲状靱帯(ligamentum cricothyroideum medianum)が下方の輪状軟骨と連結します(Moore et al., 2022)
加齢変化と性差
甲状軟骨板は、20歳代から石灰化・骨化が始まり、年齢とともに進行します(Türkmen et al., 2020)。骨化パターンには性差があり、男性では前下部から始まり上後方に進行するのに対し、女性では後部から始まる傾向があります(Claassen et al., 2015)。70歳以上では、ほぼ完全に骨化することも珍しくありません(Keen and Wainwright, 1958)。この骨化は、画像診断における喉頭病変の評価や、法医学的年齢推定に利用されます(Garvin et al., 2012)。
臨床的意義
- 声帯麻痺(vocal fold paralysis)の診断時、甲状軟骨板の触診により、輪状甲状筋の萎縮や非対称性を評価できます(Wong et al., 2021; Rubin et al., 2018)