舌骨舌筋 Musculus hyoglossus

J0074 (舌骨、筋の起こる所と着く所:上方からの図)

J0421 (舌骨筋(深層):前面図)

J0558 (喉頭と舌の動脈:右側からの図)

J0564 (頚深部の動脈、右方からの図)

J0660 (舌筋:右側からの図)

J0661 (舌の深層筋:右側からの図)

J0684 (咽頭の筋、右側からの図)

J0919 (右側の舌神経:右方からの図)

J0920 (右の咽頭の神経:右方からの図)
舌骨舌筋は、舌の外舌筋の一つであり、舌の形態変化と位置調整において重要な役割を担う骨格筋である。本筋は嚥下運動や構音において不可欠な機能を果たし、その解剖学的構造と臨床的意義は以下の通りである(Standring, 2021; Drake et al., 2020)。
解剖学的特徴
起始と停止
- 起始:舌骨大角の全長および舌骨体の外側部から起こる(Moore et al., 2022)
- 舌骨大角からの線維は最も広範囲で主要な部分を形成する
- 舌骨体からの線維はより内側に位置し、小角舌筋と連続することがある
- 停止:舌の側縁部において、ほぼ垂直方向に上行し、舌腱膜の外側縁および舌の側縁に広く付着する
- 停止部では茎突舌筋の線維と交錯し、舌の中間部から後方部にかけて分布する
- 一部の線維は舌尖近くまで達することもある(Netter, 2023)
形態と構造的特徴
- 筋の形状
- 薄い四角形の筋板を形成する平板状の筋である(Netter, 2023)
- 筋線維は主に垂直方向に配列しているが、上方では若干扇状に広がる
- 筋の厚さは約2-3mmで、比較的薄い構造である
- 筋線維の特徴
- Type IとType IIの筋線維が混在し、持続的な姿勢保持と迅速な運動の両方に対応している
- 筋紡錘が豊富に分布し、精密な運動制御に寄与している(Standring, 2021)
解剖学的位置関係
- 内側(深層)の関係
- 下縦舌筋(内舌筋):舌骨舌筋の直内側に位置し、舌の下制作用を補完する
- 小角舌筋:舌骨舌筋の上内側縁に沿って走行し、機能的に協調する
- オトガイ舌筋:舌骨舌筋の前方で交錯し、舌の前後運動のバランスをとる
- 外側(浅層)の関係
- 顎舌骨筋:舌骨舌筋の下外側を覆い、口腔底を形成する
- 顎二腹筋後腹:舌骨舌筋の外側後方を走行する
- 茎突舌骨筋:舌骨舌筋の外側を覆い、舌骨を後上方に牽引する
- 舌下腺:舌骨舌筋の外側に位置し、舌下腺窩を形成する
- 重要な血管・神経との関係
- 舌動脈は、舌骨舌筋の外側(浅層)を走行し、本筋の表面で複数の枝に分岐する
- 舌下神経(第XII脳神経)は、舌骨舌筋を貫通するか、その下縁を迂回して舌内に進入する(Sinnatamby, 2019)
- 舌静脈は舌骨舌筋の外側を伴行し、内頸静脈へ注ぐ
- 舌下神経と舌動脈の間に形成される「舌下神経三角」は、外科的に重要なランドマークとなる
血管支配
- 動脈支配
- 主に舌動脈の枝である舌深動脈と舌背動脈から栄養を受ける
- 舌動脈は外頸動脈の前方枝で、舌骨大角の高さで分岐する
- 副次的に顔面動脈の枝からも栄養を受けることがある(Standring, 2021)
- 静脈還流
- 舌静脈を経由して内頸静脈へ還流する
- 舌深静脈は舌骨舌筋の内側を走行し、豊富な静脈叢を形成する
神経支配
- 運動神経
- 舌下神経(第XII脳神経)により支配される
- 舌下神経は延髄の舌下神経核から起始し、舌下神経管を通過して頸部に出る
- 舌骨舌筋への枝は、本筋を貫通する際、または下縁を迂回する際に分岐する(Sinnatamby, 2019)
- 感覚神経
- 筋紡錘からの固有感覚情報は、舌下神経を介して中枢に伝達される
- 舌の粘膜の感覚は舌咽神経(第IX脳神経)により伝達される