永久歯 Dentes permanentes

永久歯は、乳歯が脱落した後に残る歯のことです。上下左右各側に、切歯2個、犬歯1個、小臼歯2個、大臼歯3個の計8個ずつ、合計32個の永久歯があります(Berkovitz et al., 2017)。これらは以下のように解剖学的に分類されます:

永久歯の解剖学的分類

  1. 切歯(Incisors):前方に位置し、平らな切縁を持ち、食物を切断する機能を担います。上顎中切歯は最も幅広く、側切歯はやや小さい形態を示します。下顎切歯は比較的サイズが均一です(Nanci, 2018)。
  2. 犬歯(Canines):切歯と小臼歯の間に位置し、尖った咬頭を持ちます。強固な単根歯で、食物を引き裂く機能を担い、口角部の支持にも寄与します(Fehrenbach and Popowics, 2015)。
  3. 小臼歯(Premolars):第一小臼歯と第二小臼歯があり、通常1〜2個の咬頭を持ちます。咀嚼の初期段階で食物を粉砕する役割を担います。上顎第一小臼歯は通常2根を持ち、他の小臼歯は単根であることが多いです(Nelson and Ash, 2010)。
  4. 大臼歯(Molars):口腔の最後部に位置し、広い咬合面と複数の咬頭を持ちます。主要な咀嚼機能を担います。上顎大臼歯は通常3根、下顎大臼歯は2根を持ちます。第三大臼歯(智歯)は発育が不完全であったり、埋伏していることが多く、臨床的に問題となることがあります(Scheid and Weiss, 2017)。

永久歯の萌出と臨床的意義

永久歯の萌出順序は一般的に:第一大臼歯(6歳頃)→中切歯→側切歯→第一小臼歯→第二小臼歯→犬歯→第二大臼歯→第三大臼歯(17-25歳)となります(Proffit et al., 2019)。この萌出時期には個人差があります。

臨床的には、永久歯は齲蝕(虫歯)、歯周病、外傷、先天異常(例:歯の欠損、過剰歯)などの様々な病態の対象となります(Hupp et al., 2014)。また、不正咬合の診断と治療においても永久歯の位置関係は重要な要素です。歯科医療において、永久歯の解剖学的知識は適切な診断、治療計画、および処置を行う上で不可欠です(Okeson, 2020)。

参考文献

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J0641 (永久歯:唇または頬側からの図)

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J0642 (永久歯:舌側からの図)

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J0643 (右側上顎の永久歯:接触表面; 側面からの前歯、後部からの後歯)

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J0648 (約5歳小児の顔の骨、乳歯と永久歯の露出した構造、右側から少し前方からの図)

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J0649 (下顎の永久歯:上方からの図)

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J0651 (永久歯列:右側からの図)

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J0652 (永久歯列を通る前面切断で、大臼歯の接触を示す、やや模式化された図)