エナメル質は、歯の表層部分を覆う硬くて光沢のある物質です。厚さは約2〜2.5mmで、主にヒドロキシアパタイト90%、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、炭酸マグネシウム6〜8%からなる無機質と、蛋白質および糖蛋白質からなる有機質で構成されています。無機成分は一定の結晶配列を持ち、人体で最も硬い石灰化組織となっています。エナメル質のほとんどは無機ヒドロキシアパタイトから成り、直径が4μmであり、時には8μmにも達する六角棒あるいは柱状のエナメル小柱が密に配列しています。個々のエナメル小柱はエナメル質の全長にわたって伸びており、隣接するエナメル小柱との間のわずかな間隙はヒドロキシアパタイトの結晶で埋められています。少量の有機性基質(タンパク質と多糖体)は、エナメル質形成細胞であるエナメル芽細胞が、エナメル質の石灰化の前に合成・分泌した物質の遺残です。エナメル質によって覆われている表層部分は特に解剖歯冠と呼ばれ、口腔に露出している部分は臨床歯冠とも呼ばれます。歯根はセメント質で覆われており、特に歯槽内に埋まっている部分は臨床歯冠とも呼ばれることがあります。