短趾屈筋

日本人のからだ(堀口正治 2000)によると

短趾屈筋は、停止腱が二分して長趾屈筋の腱を通すため、上肢の浅指屈筋に相当します。

足底腱膜に覆われ、その背側面(内面または深層面)と踵骨隆起(母趾外転筋が起こる内側突起と小趾外転筋が起こる外側突起の間)から起始し、前方に向かいます。停止腱は4本に分かれ、長趾屈筋の停止腱の底側に重なり、第2から第5趾の腱鞘の中を走ります。最後に各腱は二分して腱裂孔を作り、長趾屈筋の腱を通した後、第2から第5趾の中節骨底に停止します。

第5趾腱は26%の頻度で欠如します(Nishi, 1953 a)。第4趾腱の欠如は稀です。短趾屈筋の第5趾腱が欠如する場合、足底を走る長趾屈筋腱の底側面から小さな羽状筋(副小趾屈筋)が生じ、第5趾への腱を代償的に出す場合と、腱のみが長趾屈筋腱から分かれて代償する場合があります。竹重ら(1959 b)の222側の調査によれば、短趾屈筋の第5趾腱の欠如は58例(26%)、副小趾屈筋による代償は35例、腱による代償が5例、完全欠如は18例でした。また、停止腱が二分せず、したがって長趾屈筋腱を通らずに側面を通過して中節骨に停止することや、停止腱が長趾屈筋腱に癒合することもあります。

短趾屈筋は内側足底神経によって支配されます。この筋は、体重がかからない下肢では第2から第5趾の屈曲を引き起こします。また、足に体重がかかっているとき、この筋の収縮は内側と外側の縦足弓の維持に寄与します。

足底の筋 (図64)

母趾球筋(母趾外転筋、短母趾屈筋、母趾内転筋)、小趾球筋(小趾外転筋、短小趾屈筋、小趾外転筋)、そして中足筋(短趾屈筋、足底方形筋、虫様筋、底側骨間筋・背側骨間筋)に分けられます。中足筋では、対応する手の中手筋とは異なり、短趾屈筋と足底方形筋が追加で存在します。短趾屈筋は上肢の浅趾屈筋に相当しますが、足底方形筋に相当する上肢の筋は存在しません。また、小趾球筋では、手の短掌筋に相当する筋は存在しません。

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図64 足底の筋を底側からみたところ(右側)

図64 足底の筋を底側からみたところ(右側)

A:浅層(足底腱膜を除く状態)、B:浅層(短趾屈筋を除く状態)、C:深層(母趾および小趾外転筋、長母趾および長趾屈筋腱と足底方形筋を除く状態)。Abh:母趾外転筋、Adm:小趾外転筋、Ap:足底腱膜、C:踵骨、CI(Qp):外側頭(足底方形筋)、Cm(Qp):内側頭(足底方形筋)、Co(Adh):斜頭(母趾内転筋)、Ct(Adh):横頭(母趾内転筋)、Fdb:短趾屈筋、Fdl:長趾屈筋、Fdmb:短小趾屈筋、Fhl:長母趾屈筋、Id:背側骨間筋、lp:底側骨間筋、L:虫様筋、Lpl:長足底靭帯、Odm:小趾対立筋、Os(Pel):立方骨粗面と関節する長腓骨筋停止腱の種子骨、Peb:短腓骨筋、Pel:長腓骨筋、Qp:足底方形筋、Tp:後脛骨筋、VI(Fhb):外側腹(短母趾屈筋)、Vm(Fhb):内側腹(短母趾屈筋)