小指対立筋 Musculus opponens digiti minimi manus
小指対立筋は、手の小指球筋群に属する重要な筋肉で、解剖学的特徴と臨床的意義を持っています(Standring, 2016)。

J0205 (右の手骨:筋の起こる所と着く所を示す手掌側からの図)

J0482 (右手掌の筋)

J0483 (右手の手掌の筋(第2層))

J0484 (右の母指球の深筋)

J0943 (右手掌の神経、表層)

J0944 (右手の神経:深層)
解剖学的特徴
- 位置:小指外転筋と短小指屈筋の深層に位置し、手掌の尺側縁に沿って斜走しています(Moore et al., 2018)
- 形態:扁平な四角形の筋で、起始部は細く、停止部に向かって扇状に広がります
- 起始:有鉤骨鉤と屈筋支帯の尺側部(Sunderland and Hughes, 1946)
- 停止:第5中手骨の尺側縁全体(骨幹から骨頭まで)
- 神経支配:尺骨神経深枝(C8とTh1)による支配を受けます(Tubbs et al., 2015)
- 血液供給:尺骨動脈と深掌動脈弓からの分枝
機能
- 主要作用:小指の対立運動(opposition)を行います(Neumann, 2017)
- 小指を橈側方向へ回旋させながら掌側に動かします
- 第5中手骨を回内させ、小指を母指に近づける動きを可能にします
- 補助作用:小指の内転と屈曲を補助します
発生学
発生学的には前腕屈筋群の延長として発達し、母指対立筋と相同の筋肉です。霊長類において対立運動の獲得と共に発達してきました(Diogo and Wood, 2012)。
変異
- 小指外転筋や短小指屈筋との部分的な癒合が見られることがあります(Yamada et al., 2010)
- 発達の程度に個人差があり、時に低形成のこともあります
臨床的意義
- 尺骨神経障害:Guyon管(手根管の尺側部分)での尺骨神経深枝の障害により、小指対立筋の機能不全が生じます(Wang and Zhu, 2014)
- 自転車のハンドルを長時間握るサイクリストに多い(ハンドルバーパルシー)
- 手根部での外傷や骨折、ガングリオンによる圧迫でも起こります