三角筋 Musculus deltoideus
三角筋は肩関節を覆う大きな三角形状の筋肉で、肩の外形を形成する解剖学的・機能的に極めて重要な構造です。その名称はギリシャ文字のデルタ(Δ)に由来し、展開した形状が逆三角形に類似することから名付けられました(Gray, 2020)。

J0163 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:背面からの図)

J0164 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:前面からの図)

J0167 (右鎖骨、筋の起こる所と着く所:上方からの図)

J0168 (右鎖骨、筋の起こる所と着く所:下方からの図)

J0175 (右上腕骨とその筋の起こる所と着く所:前方からの図)
J0176 (右上腕骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)

J0427 (広頚筋を除去した後の右胸部の筋:腹側図)

J0429 (右の胸筋(第2層)、正面からの図)

J0448 (広い背筋:背面図)

J0449 (広い背中の筋(第2層):背面図)

J0461 (右上腕の筋:橈側からの図)

J0462 (右脇の下の筋:尾側図)

J0463 (右腋窩の筋膜:尾側図)

J0466 (右上腕の筋:掌側図)

J0468 (右上腕の筋:背面図)

J0574 (右腋窩の動脈、正面図)

J0575 (右肩甲骨の動脈:背面図)

J0576 (右上腕の動脈、手掌側からの図)

J0615 (右の腋窩の静脈:前面図)

J0896 (左大脳半球外側面)

J0932 (右側の腕神経叢とその短い枝:前面からの図)

J0933 (右肩甲骨の神経:後方からの図)

J0937 (右上腕の皮神経、外側後方からの図)

J0939 (右上腕の神経幹:内側からの図)

J0940 (右上腕の筋神経:前方からの筋)

J0947 (右上腕の筋神経:後方からの図)

J0954 (体幹の皮神経:正面右側からの図)
解剖学的構造
起始と停止
三角筋は3つの部分から構成され、それぞれ異なる起始部位を持ちます(Standring, 2021):
- 前部(鎖骨部、pars clavicularis):鎖骨の外側1/3の前縁から起始します。この部分は約7本の腱性束から構成されています。
- 中部(肩峰部、pars acromialis):肩峰の外側縁および上面から起始します。この部分は最も厚く、多羽状筋構造を呈します。
- 後部(肩甲棘部、pars spinalis):肩甲棘の下縁および後縁から起始します。この部分も腱性束から構成されています。
これら3部の筋線維は収束して、上腕骨外側面の中央部に位置する三角筋粗面(deltoid tuberosity)に停止します(Drake et al., 2019)。停止部は約7cm×4cmの粗面で、強固な腱性付着を形成しています。
筋構造と筋線維配列
三角筋は複雑な多羽状筋(multipennate muscle)構造を持ち、特に中部において顕著です(Moore et al., 2022)。この構造的特徴により:
- 生理学的断面積が大きく、強大な力を発揮できます
- 筋線維の配列が多方向性で、様々な角度からの力の発揮が可能です
- 筋の体積に対して相対的に大きな力を産生できます
前部と後部の筋線維は比較的平行に配列していますが、中部の筋線維は複数の腱性中隔から扇状に広がる複雑な配列を示します(Sakoma et al., 2011)。
神経支配
三角筋は腋窩神経(axillary nerve、C5-C6神経根由来)によって支配されます(Standring, 2021)。腋窩神経は腕神経叢の後束から分岐し、以下の経路を辿ります:
- 上腕骨の外科頸の後方を通過
- 四角間隙(quadrangular space)を通って三角筋の深層に到達