横隔膜

横隔膜は、胸腔と腹腔の境界を形成する膜状の筋肉で、胸郭下口の周囲から始まります。この起点は腰椎部、肋骨部、胸骨部の3つに分けられます。これらの部分から出る筋束は、円蓋のように胸腔内で盛り上がり、中央部の腱膜に付着します。これを腱中心と呼びます。横隔膜の上面は胸内筋膜、胸膜、心膜で覆われ、下面は横隔膜筋膜(横筋筋膜の一部)および腹膜(肝臓その他の臓器が接する部分を除く)で覆われます。このドーム状の横隔膜は、胸腔の床および腹腔の天井となります。筋腱様の隔壁を閉じることは哺乳類の特徴です。横隔膜は最も重要な呼吸筋であり、筋の素材は系統発生的に第3~5頚部筋節から由来し、頚神経叢からの横隔神経(C4(3,5))に支配されます。筋性横隔膜は、腰椎部、肋骨部、胸骨部から形成されます。

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J0403 (犬の横隔膜(左背面部)の動脈の分岐、頭側図)

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J0433 (横隔膜:腹腔からの図)

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J0434 (横隔膜:腰部、腹腔からの図)

日本人のからだ(宮内亮輔・長島聖司・小川皓一2000)によると

横隔膜は、胸腔と腹腔の境界を形成する膜状の筋肉で、胸郭下口の周囲から始まります。この起点は腰椎部、肋骨部、胸骨部の3つに分けられます。これらの部分から出る筋束は、円蓋のように胸腔内で盛り上がり、中央部の腱膜に付着します。これを腱中心と呼びます。横隔膜の上面は胸内筋膜、胸膜、心膜で覆われ、下面は横隔膜筋膜(横筋筋膜の一部)および腹膜(肝臓その他の臓器が接する部分を除く)で覆われます。このドーム状の横隔膜は、胸腔の床および腹腔の天井となります。筋腱様の隔壁を閉じることは哺乳類の特徴です。横隔膜は最も重要な呼吸筋であり、筋の素材は系統発生的に第3~5頚部筋節から由来し、頚神経叢からの横隔神経(C4(3,5))に支配されます。筋性横隔膜は、腰椎部、肋骨部、胸骨部から形成されます。

これまでの研究報告によれば、食道裂孔、大動脈裂孔、腰椎部の内側脚、胸肋三角および腰肋三角の形態が記述されています。食道裂孔および大動脈裂孔の位置は、孔の両側縁間を二分する線が孔の首側縁と交わる点とされています(池本,1931; 櫛田,1941; 宮田,1946)。

食道裂孔

食道裂孔は、大動脈裂孔の左前上方にある開口部です。これは第10胸椎の高さに位置し、腰椎部の左右の脚から出る筋線維束によってループ状に囲まれています。この裂孔を通るのは、食道だけでなく、左胃動脈の枝、迷走神経、左横隔神経の枝も含まれています。

大動脈裂孔

第12胸椎の椎体前に位置する大動脈裂孔は、横隔膜の腰椎部の左右の脚間に存在します。この裂孔は胸大動脈などの血管、交感神経叢(大動脈神経叢)、奇静脈、胸管を通します。

(1) 食道裂孔と大動脈裂孔との相互位置関係

食道裂孔と大動脈裂孔の相互位置関係について、日本人成人と胎児では、食道裂孔が大動脈裂孔の左側にある型、食道裂孔と大動脈裂孔が同一矢状面に存在する型、そして食道裂孔が大動脈裂孔の右側にある型の3型に分類できます(表29) (池本, 1931; 櫛田, 1941; 宮田, 1946)。これら3型の出現頻度については、報告により差異が見られますが、食道裂孔が大動脈裂孔の左側に位置する型が最も多く見られます。