
J0163 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:背面からの図)




J0430 (右の前鋸筋(外側鋸筋):外側およびやや腹側からの図)








J0810 (後期妊娠中の右乳腺:乳房筋に対する位置で自由に調整された標本)



J0934 (右の腕神経叢(鎖骨下部)が下から前に向かっている図)

前鋸筋は胸郭外側に位置する扇状の平らな筋肉で、解剖学的および臨床的に重要な意義を持ちます (Gray and Lewis, 2000; Standring, 2020)。肩甲骨の運動と固定、および呼吸補助において中心的な役割を果たし、その機能不全は重大な臨床的問題を引き起こします。
起始部
前鋸筋は第1〜8または9肋骨の外側面(前外側部)から鋸歯状に起始します (Morimoto et al., 1992b)。起始部は通常9〜10の筋束(歯状突起)から構成され、各筋束は対応する肋骨の外側面および肋間筋膜から起こります。最上部の筋束は第1肋骨および第2肋骨から、中間部は第2〜4肋骨から、下部は第5〜8(9)肋骨から起始します (村田ら, 1968; Standring, 2020)。
起始部には個体差が認められ、日本人を対象とした研究では第1肋骨からの起始が約85%、第9肋骨までの起始が約40%で観察されています (村田ら, 1968)。
停止部
前鋸筋は肩甲骨の内側縁(椎骨縁)全体に停止し、特に上角、内側縁中央部、下角に集中します (村田ら, 1968; Neumann, 2017)。停止部は機能的に3つの部位に区分されます:
筋の構造と走行
前鋸筋の筋線維は肋骨から後外側方向に走行し、肩甲骨下を通過して内側縁に到達します。筋の厚さは起始部で約2〜3mm、停止部で5〜8mmとなり、下部線維が最も発達しています (Eisler, 1912)。筋全体は胸郭外側面を覆い、その範囲は腋窩前壁から背部にかけて広範囲に及びます。
前鋸筋は上部・中部・下部の3つの機能的部位に分けられ (Salmons, 1995)、各部位は異なる運動学的役割を担っています。この区分は臨床的な評価や治療において重要な意義を持ちます。
長胸神経
前鋸筋は長胸神経(nervus thoracicus longus)により支配されます。長胸神経は主にC5、C6、C7神経根から起こり、個体差としてC4やC8からの寄与も認められます (加藤・佐藤, 1978; Tubbs et al., 2006)。神経は腕神経叢の上・中幹から分岐し、斜角筋の後面を下降して胸郭外側面に達します。
長胸神経の走行は比較的表層にあり、外傷や手術操作により損傷を受けやすい特徴があります。神経は前鋸筋の表面を下行しながら、通常5〜7本の枝を筋内に送り込みます (Standring, 2020)。
神経支配の変異