小頬骨筋 Musculus zygomaticus minor

小頬骨筋は顔面表情筋の一つで、上唇の挙上と表情形成に重要な役割を果たす筋肉です。この筋は顔面神経によって支配され、笑顔や悲しみなどの表情の微妙な変化に寄与します（Gray et al., 2020）。

J0079 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所を示す：前面からの図)

J0081 (外頭蓋底：筋の起こる所と着く所を示す図)

J0405 (頭部の浅層筋：少し右側からの図)

J0406 (頭部浅層の筋：腹側図)

上唇方形筋

1. 小頬骨筋（上唇方形筋の頬骨頭）A04_0088（小頬骨筋）Zygomaticus minor muscle
2. 上唇挙筋（眼窩下筋；上唇方形筋の眼窩下頭）A04_0089（上唇挙筋）Levator labii superioris muscle
3. 上唇鼻翼挙筋（眼角筋；上唇方形筋の眼角頭）A04_0090（上唇鼻翼挙筋）Levator labii superioris alaeque nasi muscle

これらの筋は一般的に単一の筋板を形成し、分離が困難です。これら3つの筋は「上唇方形筋M. quadratus labii superioris」と呼ばれます。

解剖学的特徴

起始と停止

• 起始部：頬骨側面の前部（頬骨前面）に起始します。具体的には、頬骨の眼窩下縁の外側部分から筋線維が始まります（Standring, 2021）。
• 停止部：上唇の皮膚および口輪筋の深層に停止します。筋線維は下内側方向に走行し、上唇の外側部分の皮下組織に広く分散して終わります（Drake et al., 2019）。

位置関係と周囲構造

• 大頬骨筋との関係：大頬骨筋の内側・前方に位置し、両筋は平行に走行しますが、小頬骨筋はより内側で上唇に付着します（Moore et al., 2022）。
• 眼輪筋との関係：眼輪筋の外側縁に接し、一部の筋線維は眼輪筋と融合することがあります（Netter, 2018）。
• 上唇挙筋との関係：小頬骨筋は上唇挙筋の外側に位置し、機能的に協調して働きます。両筋は上唇方形筋の構成要素として考えられています（Agur and Dalley, 2021）。

神経支配

• 顔面神経（第VII脳神経）の頬骨枝および頬筋枝により支配されます（Netter, 2018）。
• 顔面神経は側頭骨の茎乳突孔から出た後、耳下腺内で分岐し、頬骨枝は頬部を前上方に走行して小頬骨筋を支配します（Standring, 2021）。
• 神経支配のパターンには個人差があり、頬骨枝と頬筋枝の間に吻合が存在することが多く報告されています（Moore et al., 2022）。