上唇挙筋 Musculus levator labii superioris

上唇挙筋は、顔面表情筋群に属する重要な筋肉で、上唇の挙上と表情形成に不可欠な役割を果たします。本筋は上唇方形筋(Musculus quadratus labii superioris)の眼窩下頭を構成し、小頬骨筋および上唇鼻翼挙筋と協調して上唇の複雑な運動を制御しています (Standring, 2021; Moore et al., 2022)。

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J0079 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所を示す:前面からの図)

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J0081 (外頭蓋底:筋の起こる所と着く所を示す図)

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J0405 (頭部の浅層筋:少し右側からの図)

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J0406 (頭部浅層の筋:腹側図)

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J0410 (口周りの筋:背面からの図)

上唇方形筋

  1. 小頬骨筋(上唇方形筋の頬骨頭)A04_0088(小頬骨筋)Zygomaticus minor muscle
  2. 上唇挙筋(眼窩下筋;上唇方形筋の眼窩下頭)A04_0089(上唇挙筋)Levator labii superioris muscle
  3. 上唇鼻翼挙筋(眼角筋;上唇方形筋の眼角頭)A04_0090(上唇鼻翼挙筋)Levator labii superioris alaeque nasi muscle

これらの筋は一般的に単一の筋板を形成し、分離が困難です。これら3つの筋は「上唇方形筋M. quadratus labii superioris」と呼ばれます。

I. 解剖学的特徴

1. 起始・走行・停止

**起始:**上唇挙筋は上顎骨前頭突起の内側部分、特に眼窩下縁の眼窩下孔(foramen infraorbitale)の直上から起始します。起始部は眼窩下縁に沿って約1〜1.5cmの幅を持ち、上顎骨の眼窩面と顔面の境界領域に位置します (Drake et al., 2020; Standring, 2021)。

**走行:**筋線維は起始部から内側下方に向かって斜めに走行し、上唇に向かいます。走行中、筋は扇状に広がりながら下降し、その深層には眼窩下神経と眼窩下血管が走行しています。筋の厚さは約2〜3mmで、比較的薄い筋板を形成します (Moore et al., 2022; Netter, 2019)。

**停止:**上唇挙筋の筋線維は上唇の皮膚と口輪筋(musculus orbicularis oris)の上部線維に停止します。停止部は上唇の外側部分に集中し、一部の線維は鼻唇溝(nasolabial fold)の形成に関与します。筋線維は口輪筋の深層と浅層の両方に交錯しながら付着し、上唇の挙上時に鼻唇溝を深くする機能を担います (Standring, 2021; Schünke et al., 2018)。

2. 神経支配

上唇挙筋は顔面神経(第VII脳神経、nervus facialis)によって支配されています。具体的には、顔面神経の頬骨枝(rami zygomatici)および頬筋枝(rami buccales)からの神経線維が本筋に分布します。顔面神経は耳下腺を貫通した後、5つの主要な枝に分岐し、そのうち頬骨枝と頬筋枝が上唇挙筋の運動を制御します (Schünke et al., 2018)。

神経線維は筋の深層面から進入し、筋内で細かく分岐して筋線維に分布します。顔面神経の損傷部位によって上唇挙筋の麻痺の程度が異なり、特に耳下腺部での損傷や側頭骨内での顔面神経管の障害では、本筋を含む複数の表情筋が同時に麻痺します (Peitersen, 2002)。

3. 血液供給

上唇挙筋への血液供給は主に以下の動脈系から行われます: