股関節 Articulatio coxae

J0330 (右の股関節:前方からの図)

J0331 (右の股関節:後方ろからの図)

J0332 (右股関節:後方からの図)

J0333 (右の股関節:内側からの図)

J0334 (右の股関節:前面切断図、前方からの後部切断図)

J0378 (右の股関節部:脚は伸ばされて少し内側に巻かれ、腹背方向からのX線像)

J0379 (右の股関節部:大腿は伸ばされて少し内側に巻かれ、腹背方向からのX線像)

J0962 (右の臀部の深部神経:後方からの図)
解剖学的構造
股関節は、大腿骨頭(caput femoris)と寛骨臼(acetabulum)によって構成される球関節(articulatio spheroidea)です(Gray, 2020)。関節学的分類では可動関節(diarthrosis)に属し、形態学的には臼蓋関節(enarthrosis)に分類されます。
関節面の構造:
- 大腿骨頭:大腿骨近位端に位置する球状の関節面で、直径は約4-5cmです。表面の約2/3が軟骨で覆われ、中央やや下方に大腿骨頭窩(fovea capitis femoris)があり、ここに大腿骨頭靭帯が付着します(Standring, 2021)
- 寛骨臼:腸骨、坐骨、恥骨の三骨が癒合して形成される半球状の関節窩です。寛骨臼の関節面(facies lunata)は馬蹄形を呈し、大腿骨頭の約2/3を覆います。中央部には寛骨臼窩(fossa acetabuli)があり、脂肪組織で満たされています(Moore et al., 2022)
- 臼蓋唇(labrum acetabulare):寛骨臼縁に付着する線維軟骨性の構造物で、関節窩を約5mm深くし、大腿骨頭の被覆率を40%から60%に増加させます。これにより関節の求心性と安定性が著しく向上し、関節内圧の維持と滑液の分布にも重要な役割を果たします(Neumann, 2017)
関節包と靭帯:
- 関節包(capsula articularis):股関節を囲む強靭な線維性の被膜で、寛骨臼縁と臼蓋唇に近位端が付着し、遠位端は大腿骨頚部に付着します。前面では転子間線(linea intertrochanterica)に、後面では大腿骨頚の中央付近に付着し、大腿骨頚の大部分を関節包内に含みます(Drake et al., 2020)
- 腸骨大腿靭帯(ligamentum iliofemorale):人体最強の靭帯で、下前腸骨棘から起始し、Y字型に広がって転子間線に付着します(Bigliani靭帯)。立位時の股関節伸展を制限し、最小限の筋活動で直立姿勢を維持することを可能にします。引張強度は約350kgに達します(Standring, 2021)
- 恥骨大腿靭帯(ligamentum pubofemorale):恥骨の上枝から起始し、関節包の前下部を補強します。股関節の過度の外転と伸展を制限します(Moore et al., 2022)
- 坐骨大腿靭帯(ligamentum ischiofemorale):坐骨体から起始し、関節包の後面を螺旋状に走行して大転子内側に付着します。股関節の内旋と内転を制限します(Drake et al., 2020)
- 大腿骨頭靭帯(ligamentum capitis femoris):関節内靭帯として大腿骨頭窩から寛骨臼横靭帯に伸びます。小児期には閉鎖動脈の枝を含み、大腿骨頭への血液供給に関与しますが、成人では栄養血管としての重要性は低下します。しかし、股関節の極端な運動時の機械的安定性に寄与する可能性が示唆されています(Ito et al., 2018)
滑膜と滑液包:
- 滑膜(membrana synovialis):関節包の内面を覆い、滑液を分泌します。関節軟骨、臼蓋唇、大腿骨頭靭帯の表面には存在しません
- 腸腰筋滑液包(bursa iliopectinea):約15%の症例で関節腔と交通し、腸腰筋腱の摩擦を軽減します
関節の運動と可動域
股関節は3つの運動軸(矢状軸、前後軸、垂直軸)を持つ多軸性関節で、以下の運動が可能です(Norkin and White, 2016):
- 屈曲(flexion):約120°(膝関節屈曲時は約140°)。主動作筋は腸腰筋、大腿直筋、縫工筋、大腿筋膜張筋です