腸腰靱帯 Ligamentum iliolumbale
腸腰靱帯は、腰椎と骨盤(腸骨)を強固に連結する重要な線維性結合組織であり、腰仙部の安定性を維持する上で中心的な役割を果たしています。この靱帯は腰椎椎体の横突起から腸骨へと放射状に広がる強靭な線維束から構成され、体幹の動きを制限するとともに、腰椎と骨盤の間に働く力学的負荷を分散させる機能を持ちています。

J0325 (右の骨盤の靱帯:前面から少し上からの図)

J0326 (右側の骨盤の靱帯:後方からの図)

J0490 (腰部の筋:腹側図)

J0491 (右の鼡径部の筋膜:腹側からの図)
解剖学的構造
起始と停止
- **起始部:**主に第5腰椎(L5)の横突起から起始し、一部の線維は第4腰椎(L4)の横突起からも起始します。L5横突起の先端部および基部から強固に付着しています (Bogduk, 2005; Luk et al., 1986)。
- **停止部:**腸骨稜の内唇および腸骨翼の内側面に広範囲に停止します。特に腸骨稜の後方部分と仙腸関節の前方領域に強固に付着しています (Standring, 2020; Uhthoff, 1993)。
線維束の構成
腸腰靱帯は解剖学的に以下の複数の線維束に区分されます:
- **上部束(Superior band):**L4横突起から起始し、腸骨稜の内唇前方部に停止します。この束は主に前外側方向への動きを制限します (Willard et al., 2012)。
- **下部束(Inferior band):**L5横突起から起始し、腸骨翼の内側面および仙腸関節の前縁に停止します。この束は腰仙関節の前方剪断力に対する主要な抵抗構造となっています (Pool-Goudzwaard et al., 2003)。
- **前部線維(Anterior fibers):**腰方形筋の前面を走行し、大腰筋の外側縁と密接な関係にあります。
- **後部線維(Posterior fibers):**腰方形筋の後面を走行し、多裂筋や最長筋との線維性連結を持ちます。
組織学的特徴
腸腰靱帯は密性結合組織から構成され、主にI型コラーゲン線維が高密度に配列した構造を持ちます。線維芽細胞が線維束の間に散在し、靱帯の修復と維持に関与しています。靱帯の厚さは平均3〜5mmで、個人差があります (Mahato, 2013)。血管供給は腰動脈と腸腰動脈の分枝から受け、神経支配は腰神経叢の後枝から受けています。これにより、靱帯損傷時には疼痛が生じる神経学的基盤が存在します (Bogduk, 1980)。
位置関係と周囲構造
- **前方:**大腰筋が位置し、腸腰靱帯の前部線維は大腰筋の筋膜と連続しています (Moore et al., 2018)。
- **後方:**腰方形筋が位置し、靱帯の後部線維は腰方形筋の起始腱と融合しています。
- **内側:**L5/S1椎間板および腰仙関節が位置します。
- **外側:**腸骨稜および腸骨翼の外面へと線維が広がります。