後縦靭帯 Ligamentum longitudinale posterius
後縦靱帯は、脊柱管内を縦走する重要な線維性結合組織で、解剖学的位置および機能の両面で脊柱の安定性に重要な役割を果たします(Gray et al., 2023)。

J0290 (腰椎の一部の正中断、右切断半分:左方からの図)

J0293 (腰椎体と靭帯:後方からの図)

J0301 (後頭骨および第1から第3の頚椎、靱帯(第二層):後方からの図)

J0302 (後頭骨と最初から三番目までの頚椎を含む正中矢状断とそのリング状の組織:左方からの若干図式化された図)

J0305 (右側の肋骨と関連する椎骨、および靱帯:背面および右側からの図)
解剖学的特徴
- 走行:脊柱管の前壁(椎体後面)に沿って頭蓋底から仙骨まで連続的に縦走します(Standring, 2021)
- 起始・停止:上方は大後頭孔前縁から約1cm上方の斜台(clivus)に始まり、下方は仙骨管の前壁に停止します(Newell, 2022)
- 形態:帯状構造で、幅は頚椎部で最も広く(約25mm)、胸椎部で狭くなり(約5-8mm)、腰椎部でやや拡大します(約10-12mm)(Moore et al., 2024)
- 付着様式:椎間板部分では幅広く強固に付着し、「鋸歯状」の外観を呈しますが、椎体中央部では付着が弱く狭いです(Drake et al., 2020)
- 微細構造:浅層と深層の2層構造を持ち、浅層線維は4〜5椎体にわたって長く伸び、深層線維は短く隣接椎体間を連結します(Bogduk, 2022)
- 組織学:主に規則的に配列された膠原線維束からなり、弾性線維も含みます(Nakagawa et al., 2021)
機能的役割
- 脊柱の安定化:前縦靱帯との協調により、脊柱を前後から支持・安定させます(White and Panjabi, 2019)
- 過度な前屈制限:脊柱の過度な前屈を制限し、椎間板への負担を軽減します(McGill, 2023)
- 椎間板ヘルニア防止:後方へのヘルニア形成に対する防御機構として機能します(Adams and Roughley, 2022)
臨床的意義
1. 後縦靱帯骨化症(OPLL: Ossification of the Posterior Longitudinal Ligament)
疫学と病態
- 後縦靱帯骨化症は、本来線維性組織である後縦靱帯が異所性骨化を起こす疾患で、世界的には稀ですが日本人をはじめとする東アジア系民族に高頻度で見られます(有病率:日本人約2-4%、欧米人約0.1-0.3%)(Matsunaga and Sakou, 2021)
- 好発部位は頚椎(特にC4-C6レベル)で、全OPLL症例の約70%を占めます。胸椎発症は約15-20%、腰椎は約10%程度です(Hirai et al., 2023)
- 男女比は約2:1で男性に多く、50-60歳代に好発しますが、若年発症例も報告されています(Saetia et al., 2021)