恥骨筋線(大腿骨の)Linea pectinea pectinea femoris

J0229 (右の大腿骨:後方からの図)

J0230 (右大腿骨、内側からの図)

J0236 (右大腿骨、近位端、第三転子(破格):後方からの図)
解剖学的特徴
大腿骨の恥骨筋線(恥骨筋稜、linea pectinea femoris)は、大腿骨近位部の後内側面に位置する重要な骨性隆起であり、筋付着部および解剖学的ランドマークとして臨床的に重要な構造です(Standring, 2020)。
位置と起始・終点
- 起始部:小転子(lesser trochanter)の後面基部から起始します。小転子は大腿骨頸部と骨幹部の移行部内側に位置する円錐状の骨性突起で、腸腰筋(iliopsoas)が付着する部位です(Moore et al., 2018)
- 走行:起始部から下内側方に向かって斜めに走行し、大腿骨の後面を螺旋状に下降します。この螺旋状の走行から「螺旋線(spiral line)」という別名があります(Standring, 2020)
- 終点:下方では粗線(linea aspera)の内側唇(medial lip)に移行し、そこで粗線の一部となります。粗線は大腿骨骨幹部後面を縦走する顕著な骨性隆起です(Platzer, 2016)
形態学的特徴
- 表面性状:粗い骨性の隆起線で、表面は不規則で粗糙です。この粗糙な表面構造は、筋や筋膜の付着に適した形態を形成しています(Standring, 2020)
- 長さと幅:個体差がありますが、一般的に長さは4〜6cm程度で、幅は3〜5mm程度の稜線状構造を呈します
- 骨皮質の厚さ:恥骨筋線の部位では骨皮質が比較的厚く、機械的ストレスに対する強度が高くなっています
周囲解剖との関係
- 小転子との連続性:上方では小転子の後面に直接連続し、腸腰筋の付着部と隣接します(Moore et al., 2018)
- 転子間稜との関係:大転子と小転子を結ぶ転子間稜(intertrochanteric crest)の下方に位置し、これと平行に走行します
- 粗線への移行:下方では粗線の内側唇にスムーズに移行し、大腿骨骨幹部の後面形態を形成します
筋付着部位
恥骨筋線は複数の筋の停止部として機能し、股関節および大腿の運動に重要な役割を果たします(Palastanga & Soames, 2012)。
主要付着筋
- 恥骨筋(musculus pectineus):・起始:恥骨櫛(pecten pubis)および恥骨上枝の前面から起始します・停止:恥骨筋線の全長に沿って停止します。これが恥骨筋線の名称の由来です・作用:大腿の内転、屈曲、および軽度の外旋を行います・神経支配:大腿神経(femoral nerve, L2-L4)および閉鎖神経(obturator nerve, L2-L4)の二重支配を受けます・血液供給:内側大腿回旋動脈(medial circumflex femoral artery)および閉鎖動脈(obturator artery)の枝により栄養されます(Moore et al., 2018)