坐骨棘 Spina ischiadica

J0212 (右の寛骨:外側からの図)

J0213 (右の寛骨:内側からの図)

J0332 (右股関節:後方からの図)

J0333 (右の股関節:内側からの図)

J0379 (右の股関節部:大腿は伸ばされて少し内側に巻かれ、腹背方向からのX線像)

J0801 (男性の肛門挙筋:上面からの図)

J0802 (男性の肛門挙筋:左側からの図)

J0803 (男性の右側肛門挙筋と尿生殖三角:後上方からの図)
坐骨棘は、骨盤を構成する寛骨の一部である坐骨に存在する重要な骨性突起です。この構造は骨盤解剖学における重要なランドマークであり、産科学、整形外科学、神経学など多くの臨床分野において重要な意義を持ちます(Gray, 2020; Standring, 2021)。
解剖学的特徴
位置と形態
- 位置:坐骨棘は坐骨体の後縁上部に位置し、大坐骨切痕(incisura ischiadica major)と小坐骨切痕(incisura ischiadica minor)の間の境界を形成します。この位置は骨盤側壁の重要な解剖学的指標となっています(Moore et al., 2018; Standring, 2021)。
- 形状:坐骨棘は鋭利な三角錐形または円錐形の突起を呈し、その先端は鈍化していることもあります。個体差があり、形状や大きさには性差も認められます(Netter, 2019)。
- 方向:坐骨棘は後内方(骨盤腔の内側かつ後方)へ向かって突出し、小骨盤腔(骨盤腔の下部)の側壁を形成します(Gray, 2020)。
- 構造:緻密な皮質骨で構成されており、機械的強度が高い構造となっています。内部には海綿骨が含まれ、骨梁が応力方向に配列しています(Netter, 2019)。
- 性差:女性の坐骨棘は一般的に男性よりも短く、より内側に突出する傾向があります。これは分娩時の産道の広さに関連しています(Cunningham et al., 2018)。
周囲の解剖学的関係
- 大坐骨孔と小坐骨孔:坐骨棘と仙棘靭帯により、大坐骨切痕は大坐骨孔(foramen ischiadicum majus)に、小坐骨切痕は小坐骨孔(foramen ischiadicum minus)に変換されます。これらの孔は神経血管構造の通過路となります(Standring, 2021)。
- 坐骨神経との関係:坐骨神経は大坐骨孔を通過して骨盤から下肢へ走行する際、坐骨棘の外側近傍を通過します。この解剖学的近接性は臨床的に重要です(Drake et al., 2019)。
- 内陰部動静脈と陰部神経:これらの血管神経束は大坐骨孔から骨盤外に出た後、坐骨棘の周囲を回って小坐骨孔を通過し、坐骨直腸窩に至ります(Moore et al., 2018)。
靭帯と筋肉の付着部
靭帯の付着
- 仙棘靭帯(ligamentum sacrospinale):仙骨の外側縁と尾骨の先端から起始し、坐骨棘に付着します。この靭帯は大坐骨切痕を大坐骨孔に変換し、骨盤の安定性に重要な役割を果たします。靭帯の幅は約1-2cmで、強靭な線維性結合組織で構成されています(Standring, 2021; Moore et al., 2018)。
- 仙結節靭帯(ligamentum sacrotuberale)との関係:仙棘靭帯は仙結節靭帯の内側に位置し、両者は協働して骨盤の後方安定性を維持します(Gray, 2020)。
筋肉の付着
- 尾骨筋(m. coccygeus / m. ischiococcygeus):坐骨棘の内側面から起始し、仙骨下部および尾骨の外側縁に停止します。この筋は骨盤隔膜の後部を形成し、骨盤底の支持に寄与します。筋は薄い三角形を呈し、多くの場合、仙棘靭帯と密接に結合しています(Gray, 2020; Standring, 2021)。