腸骨稜 Crista iliaca
腸骨稜は腸骨の上縁を形成する骨性の隆起であり、骨盤の最も重要な解剖学的ランドマークの一つです。以下にその詳細な解剖学的特徴と臨床的意義について述べます。

J0212 (右の寛骨:外側からの図)

J0213 (右の寛骨:内側からの図)

J0214 (右の寛骨:前下からの図)

J0326 (右側の骨盤の靱帯:後方からの図)

J0448 (広い背筋:背面図)

J0450 (腰部の筋(第1層)、後方からの図)

J0451 (腰部の筋(第2層):背面図)

J0500 (右殿部の筋:外側からの図)

J0501 (右側の殿部の筋:外側からの図)
解剖学的特徴
形態と構造
- 腸骨稜は腸骨翼の上縁に位置し、骨盤上部の外側縁を形成する湾曲した骨性の隆起です (Moore et al., 2018)。
- 前方は前上腸骨棘(Anterior Superior Iliac Spine: ASIS)で終わり、後方は後上腸骨棘(Posterior Superior Iliac Spine: PSIS)で終わります。これらの棘は体表から触知可能な重要なランドマークです (Drake et al., 2020)。
- 上方から見るとS字状の弯曲を描き、前方3分の1は外側に凸、中央3分の1はほぼ直線、後方3分の1は内側に凸となります (Standring, 2021)。
- 腸骨稜は外唇(labium externum)、中間域(linea intermedia)、内唇(labium internum)の3つの部分に区分され、それぞれ異なる筋肉の付着部となります (Netter, 2019)。
- 腸骨稜の最高点は第4腰椎の高さに相当し、これは臨床的に腰椎穿刺や硬膜外麻酔の際の重要な指標となります (Agur and Dalley, 2017)。
- 腸骨稜の前方部には腸骨結節(tuberculum iliacum)が、後方部には腸骨粗面(tuberositas iliaca)が存在し、靱帯の付着部となります (Paulsen and Waschke, 2018)。
血管と神経の分布
- 腸骨稜の周囲には上殿動脈(superior gluteal artery)と上殿静脈が走行し、骨盤と殿部の血液供給を担っています (Schuenke et al., 2016)。
- 腸骨下腹神経(iliohypogastric nerve)と腸骨鼠径神経(ilioinguinal nerve)が腸骨稜の内側を走行し、腹壁の感覚支配を行っています (Hansen, 2019)。
- 外側大腿皮神経(lateral femoral cutaneous nerve)は腸骨稜の前方、ASISの近くを通過し、大腿外側の皮膚感覚を支配します。この神経の絞扼は異常感覚性大腿痛(meralgia paresthetica)の原因となります (Moore et al., 2018)。
付着する筋肉と靱帯
外唇への付着
- 前方:腹外斜筋の腱膜が付着し、腹壁の支持に重要な役割を果たします (Agur and Dalley, 2017)。
- 中央:大腿筋膜張筋が起始し、腸脛靱帯を介して膝関節の安定化に寄与します (Standring, 2021)。
- 後方:大殿筋の上部線維が起始し、股関節の伸展と外旋に作用します (Netter, 2019)。