橈骨頭 Caput radii
橈骨頭は、橈骨の近位端に位置する円板状ないし円柱状の構造で、肘関節の重要な構成要素です(Morrey & An, 1983)。上腕骨小頭(capitulum humeri)および橈骨輪状靭帯を介して尺骨と関節し、前腕の回旋運動に不可欠な役割を果たします。

J0179 (右の橈骨:母指側からの図)

J0180 (右側の橈骨:背側からの図)

J0367 (右肘関節:伸展、手の回内、手根背側方向からのX線像)

J0369 (右の肘関節:手の回内時に伸ばされた橈尺方向からのX線像)
解剖学的特徴
上面(関節窩)
- 橈骨頭の上面は浅い皿状のくぼみ(fovea articularis)を形成し、上腕骨小頭と腕橈関節(humeroradial joint)を構成します。
- このくぼみの中心は円板の幾何学的中心と一致せず、やや後外側に偏位しています。この偏心性は前腕の回内・回外運動時の力学的効率に寄与しています(Swieszkowski et al., 2001)。
- 関節軟骨で覆われており、肘関節の屈曲・伸展運動時に上腕骨小頭との間で滑走運動を行います。
周囲面(環状関節面)
- 橈骨頭の周囲は円筒状の環状面(circumferentia articularis)で、特に内側部分が平滑な関節面を形成しています。
- 内側の約3分の2は尺骨の橈骨切痕(incisura radialis ulnae)と近位橈尺関節(proximal radioulnar joint)を構成します(Standring, 2016)。
- 外側から前後方にかけては橈骨輪状靭帯(ligamentum anulare radii)に包まれ、前腕の回内・回外運動時に橈骨頭がこの靭帯内で回転します。
形態学的変異
- 日本人を対象とした形態学的研究では、橈骨頭の形状は大部分(約97.7%)が楕円形を呈し、約2.3%のみが円形(最大径と最小径の差が0.4mm以下)です(平田, 2000)。
- 楕円形の場合、最大径の方向は前後方向が48.0%、前内方から後外方向が40.7%、前外方から後内方向が11.3%と報告されています(平田, 2000)。
- この形態学的変異は、橈骨頭骨折の治療や人工橈骨頭の設計において重要な解剖学的知見となります(King et al., 1999)。
機能的役割
- 前腕の回内・回外運動:橈骨頭は橈骨全体の軸回転の中心として機能し、回内(pronation)・回外(supination)運動を可能にします(Morrey & An, 1983)。
- 肘関節の安定性:橈骨頭は肘関節の外側の安定性に寄与し、特に内側側副靭帯損傷時には二次的安定化機構として重要です(Morrey et al., 1991)。
- 荷重伝達:前腕から上腕への荷重伝達において、橈骨頭を介した経路が約20-30%を占めます(Morrey & An, 1983)。手をついて転倒した際などに、橈骨頭にかかる負荷が増大します。