解剖頚(上腕骨の)Collum anatomicum humeri

J0169 (右上腕骨:前方からの図)
J0170 (右上腕骨:後方からの図)

J0172 (右上腕骨、上端部:上方からの図)

J0312 (右肩関節:後方からの図)

J0361 (上肢帯:右肩、内側に巻かれた上腕、軸光線は斜めに前方、背腹方向からのX線像)

J0363 (上肢帯:右肩と上腕は内転し、仰臥した手の掌は腹側を向いています、腹背方向からのX線像)

J0364 (上肢帯:右肩と上腕は外転しています(ほぼ90°)、仰向けの手のひらは上向き、腹背方向からのX線像)
解剖学的構造と定義
上腕骨の解剖頚(collum anatomicum humeri)は、上腕骨頭(caput humeri)と上腕骨体(corpus humeri)の境界を示す重要な解剖学的構造物です。この部位は、関節軟骨で覆われた上腕骨頭の辺縁と、その直下の骨体との移行部に位置します(Standring, 2020; Netter, 2018)。
詳細な解剖学的特徴
解剖頚は以下の詳細な解剖学的特徴を有します:
- 位置と形態:上腕骨頭の基部を環状に取り巻く浅い溝(くびれ)として観察され、上腕骨頭の直下、関節軟骨の辺縁から数ミリメートル遠位に位置します
- 境界:上方は関節軟骨の境界によって画され、下方は大結節(tuberculum majus)、小結節(tuberculum minus)、および結節間溝(sulcus intertubercularis)の上縁によって区切られます
- 解剖学的意義:骨学的に真の意味での「頚部」に相当し、上腕骨頭と骨体を明確に区分する解剖学的ランドマークとして機能します
- 骨表面の特徴:解剖頚の表面は比較的平滑で、骨膜(periosteum)および関節包(capsula articularis)の付着部となります
外科頚との解剖学的比較
解剖頚は**外科頚(collum chirurgicum、surgical neck)**と厳密に区別される必要があります(Netter, 2018; Moore et al., 2017):
- 解剖頚:上腕骨頭の直下、関節軟骨の境界部に位置する真の解剖学的頚部。関節包内(intracapsular)に存在
- 外科頚:大結節・小結節の遠位側で、骨体が細くなり始める部位。関節包外(extracapsular)に位置し、骨折が最も好発する臨床的に重要な部位
- 位置関係:外科頚は解剖頚よりも約2〜3cm遠位に位置し、両者の間には大結節と小結節が介在します
- 臨床的重要性:外科頚骨折は上腕骨近位部骨折の中で最も頻度が高く、高齢者の転倒で多く見られます(Court-Brown et al., 2012)
血管解剖と血流供給
解剖頚周囲の血管解剖は、上腕骨頭の栄養血管系を理解する上で極めて重要です(Gerber et al., 1990; Hettrich et al., 2010):
- 主要血管:**前上腕回旋動脈(anterior circumflex humeral artery)と後上腕回旋動脈(posterior circumflex humeral artery)**が解剖頚の周囲で吻合し、上腕骨頭への主要な血液供給網を形成します
- 弓状動脈:特に**弓状動脈(arcuate artery)**が解剖頚を通過して上腕骨頭内に進入し、骨頭の大部分を栄養します。この動脈は主に後上腕回旋動脈から分岐します