胸骨柄 Manubrium sterni
胸骨柄は、胸骨の最上部に位置する重要な骨構造です。その解剖学的特徴と臨床的意義について、以下のように詳しく説明します:
解剖学的特徴
- 形態と構造
- 大きさ:胸骨全長の約4分の1を占める、比較的厚みのある骨部分です。
- 形状:上下方向に長い台形状を呈し、上部が広く、下部が狭くなっています。
- 表面性状:前面は粗造で、後面は比較的平滑です。
- 関節と接続構造
- 上端部:中央に頚切痕(jugular notch)があり、前頚部組織との位置関係の指標となります。
- 側方部:両側に鎖骨切痕(clavicular notch)があり、それぞれ胸鎖関節を形成します。
- 下部:第1肋軟骨と直接関節し、第2肋軟骨とは胸骨体との境界部で関節します。
- 重要な解剖学的指標
- 胸骨角(angle of Louis):胸骨柄と胸骨体の接合部で形成される約140度の角度で、触診で確認できる重要な指標です。
- 第2肋骨の位置:胸骨角は第2肋骨の位置を示す重要な指標となり、他の肋骨の位置確認にも利用されます。
- 縦隔との関係:縦隔の前方境界を形成し、重要な基準点となります。
臨床的意義
- 保護機能
- 心臓保護:心臓前面の防御壁として機能します。
- 大血管保護:大動脈弓、腕頭動脈などの重要な血管を前面から保護します。
- 縦隔器官保護:胸腺や縦隔リンパ節の前面に位置し、これらの器官を保護します。
- 臨床での重要性
- 救急処置:心肺蘇生法(CPR)での胸骨圧迫時の重要な指標となります。
- 手術アプローチ:縦隔腫瘍や胸腺腫の手術における重要な解剖学的指標です。
- 胸部手術:胸骨正中切開の際の重要な構造物であり、手術計画の基準となります。
- 画像診断:胸部CT、MRIなどでの位置確認の重要な指標として用いられます。
このように、胸骨柄は解剖学的位置と周囲の重要構造物との関係から、胸部外科手術や救急処置において特に重要な骨構造として認識されています。また、その形態や位置関係の理解は、臨床診断や治療において不可欠な要素となっています。

J0144 (胸骨:前面からの図)

J0145 (胸骨:右側からの図)

J0308 (鎖骨、胸骨、そして第1肋骨とその靱帯:前方からの図)

J0758 (右の胸腔と縦隔、肺および胸膜の除去:右側からの図)

J0759 (左の胸腔と縦隔、肺および胸膜の除去:左側からの図)

J0760 (胸骨を通る水平断面:上方からの図)
日本人のからだ(平田和明 2000)によると