胸骨 Sternum
胸骨は、胸郭の前部中央に位置する扁平な骨で、解剖学的および臨床的に極めて重要な構造です(Gray, 2020; Moore et al., 2018)。胸骨は胸郭の安定性を提供し、重要な臓器を保護するとともに、多くの筋肉や靱帯の付着部となっています。

J0137 (各種の椎骨と椎骨の破格を集めて、個々のピースの形態学的価値を示します(Quainによる))

J0144 (胸骨:前面からの図)
J0145 (胸骨:右側からの図)

J0148 (右側の胸郭)

J0159 (7ヶ月胎児の胸骨と真肋)

J0307 (胸骨と肋骨と靱帯:前方からの図)

J0308 (鎖骨、胸骨、そして第1肋骨とその靱帯:前方からの図)

J0427 (広頚筋を除去した後の右胸部の筋:腹側図)

J0429 (右の胸筋(第2層)、正面からの図)

J0430 (右の前鋸筋(外側鋸筋):外側およびやや腹側からの図)

J0761 (胸骨を通る水平断面:上方からの図) _13
発生学と骨化
胸骨は胚発生において、左右一対の胸骨板が正中線で融合することにより形成されます。胸骨は複数の骨核(胸骨分節)から発生し、これらは胎生期から小児期にかけて段階的に骨化します(Scheuer and Black, 2004)。
- 胸骨柄は通常1つの骨化中心から形成され、胎生5〜6ヶ月頃に出現します。
- 胸骨体は通常4〜6個の分節から構成され、それぞれが独立した骨化中心を持ちます。これらの分節は下方から上方へと順次融合し、思春期から成人初期にかけて完成します。
- 剣状突起の骨化は最も遅く、通常3歳以降に始まり、成人期まで軟骨性のまま残ることもあります。
- 胸骨柄と胸骨体の完全な癒合は通常20〜25歳頃に完了しますが、一部の個体では生涯にわたり可動性のある線維軟骨性の接合部(胸骨角)が残存します(Scheuer and Black, 2004; White et al., 2011)。
解剖学的構造
胸骨は以下の3つの主要部分から構成されています(Standring, 2015; Drake et al., 2019):
1. 胸骨柄(Manubrium sterni)
- 形状:台形または五角形の扁平な骨で、胸骨の最上部を構成します。
- 上縁:頸静脈切痕(胸骨上縁切痕、Incisura jugularis sterni)と呼ばれる浅いU字型の凹みがあり、気管や食道の位置関係を触知する重要な解剖学的指標となります。これは第2〜3胸椎の高さに相当します。
- 鎖骨切痕(Incisura clavicularis):頸静脈切痕の両外側にあり、左右の鎖骨と関節を形成します(胸鎖関節)。
- 肋骨切痕:外側縁には第1肋軟骨と第2肋軟骨の上半分が接続する切痕があります。第1肋軟骨との接合部は通常滑膜関節ではなく線維軟骨性の結合です。
- 前面:滑らかで、大胸筋の胸骨頭が付着します。
- 後面:胸骨甲状筋と胸骨舌骨筋の起始部となります。
2. 胸骨体(Corpus sterni)
- 形状:細長い扁平な骨で、胸骨の中央部を構成します。長さは成人で約10cm、幅は約3〜4cmです。