胸椎は脊柱の胸部領域を構成する12個の椎骨で、頚椎と腰椎の間に位置し、肋骨との関節を通じて胸郭を形成する重要な構造です(Gray, 2020; Standring, 2021)。


J0128 (第九胸椎から第二腰椎:右方から、そして少し背面からの図)

J0137 (各種の椎骨と椎骨の破格を集めて、個々のピースの形態学的価値を示します(Quainによる))








J0305 (右側の肋骨と関連する椎骨、および靱帯:背面および右側からの図)



胸椎(T1-T12)は第7頚椎の下方から第1腰椎の上方まで配列し、脊柱の中で最も長い区間を占めます。各椎骨は椎体、椎弓、7つの突起(1つの棘突起、2つの横突起、4つの関節突起)から構成されます(Moore et al., 2018)。胸椎は脊柱の可動性と安定性のバランスを保ち、特に体幹の回旋運動において重要な役割を果たします。
胸椎の椎体は心臓形を呈し、上下方向に高さが増加します。T1の椎体高は約1.5cmであるのに対し、T12では約2.0cmに達します(Bogduk, 2012)。椎体の側面には上肋骨窩と下肋骨窩が存在し、これらは対応する肋骨頭との関節面を形成します。上位胸椎(T1-T4)では完全な肋骨窩が各椎体の上縁と下縁に認められますが、下位胸椎では形態が変化します。
胸椎の脊柱管は円形ないし楕円形を呈し、頚椎や腰椎と比較して相対的に狭小です。脊柱管の前後径は約12-15mm、横径は約15-18mmで、脊髄の太さとの比率が小さいため、外傷時には脊髄損傷のリスクが高くなります(Oyinbo, 2011)。椎弓は厚く強固で、椎弓根は後上方に向かって走行します。
胸椎は矢状面において生理的後弯(胸椎後弯、kyphosis)を形成します。この弯曲は胎生期に形成される一次弯曲で、成人では約20-40度(Cobb角)を示します(Neumann, 2017)。後弯の頂点はT6-T7レベルに位置し、胸郭の形態形成に寄与します。過度の後弯(50度以上)は円背(round back)や脊柱後弯症として臨床的に問題となります。
胸椎の最も特徴的な解剖学的特徴は、肋骨との2つの関節部位です(Standring, 2021):
これらの関節は肋骨頭間靱帯、放線靱帯、肋横突靱帯などの強固な靱帯によって補強され、呼吸運動時の胸郭の安定性を保ちます。
胸椎の棘突起は長く、下後方に顕著に傾斜しています(Drake et al., 2019)。この傾斜は中部胸椎(T5-T9)で最も顕著で、「屋根瓦状配列」(imbrication)と呼ばれる重なり合った配置を示します。T7-T9では棘突起の先端が下位椎骨の椎体レベルに達するため、触診や穿刺時の解剖学的指標として重要です。下部胸椎(T10-T12)では棘突起の傾斜が徐々に減少し、腰椎様の水平に近い配置へと移行します。