大角(舌骨の) Cornu majus (Ossis hyoidei)
舌骨の大角は、舌骨体の外側端から延びる細長い骨突起で、解剖学的に重要な構造です(Gray et al., 2020)。
解剖学的特徴
- 長さ:約3cmで、舌骨体の外側端から後上方に細く延びています(Standring, 2021)。
- 形状:円筒状で後方に行くにつれて細くなり、その尖端はやや肥厚しています。
- 位置:第3頸椎の高さに相当し、頸部の中央部に位置しています(Moore et al., 2019)。
- 骨化:通常25歳頃までに完全に骨化します(Scheuer and Black, 2004)。
付着構造
- 靭帯:基部には茎突舌骨靱帯が付着し、茎状突起と連結しています(Netter, 2018)。
- 筋肉:
- 舌骨上筋群:顎二腹筋後腹、茎舌骨筋が付着します(Drake et al., 2019)。
- 舌骨下筋群:甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋の一部が付着します。
- 咽頭収縮筋中部が外側面に付着します(Saladin, 2022)。
- 膜:甲状舌骨膜の一部が付着します(Sinnatamby, 2018)。
臨床的意義
- 骨折:頸部外傷や絞扼による舌骨骨折では、大角が最も損傷を受けやすい部位です(Rodriguez-Vazquez et al., 2021)。
- 画像診断:CT、MRIで確認可能で、頸部の異常検出に重要な指標となります(Lohan et al., 2020)。
- 嚥下障害:大角の損傷は嚥下痛や嚥下障害を引き起こすことがあります(Pearce and Wallis, 2018)。
- 法医学的意義:絞殺や首つり自殺の判定に重要な所見を提供します(Pollanen et al., 2019)。
発生学的側面
- 起源:第2咽頭弓の軟骨(ライヘルト軟骨)から発生します(Schoenwolf et al., 2021)。
- 発達:出生時は舌骨体と軟骨結合していますが、成長と共に骨化が進みます(O'Rahilly and Müller, 2010)。
解剖学的変異