鈎状突起(篩骨の)Processus uncinatus (Ossis ethomoidalis)

J0040 (篩骨:少し簡略化された後方からの図)

J0042 (右の篩骨迷路:内側からの図)
J0043 (右の篩骨迷路:外側からの図)

J0045 (右下鼻甲介:内側からの図)

J0089 (右の翼口蓋窩、外側からの図)

J0094 (頭蓋骨の前頭断、後方からの図)

J0096 (鼻腔の右側壁:左方からの図)

J0640 (頭部の前頭断、後方からの図)
篩骨の鈎状突起は、鼻腔の側壁から内側に突き出た薄い湾曲した骨板構造であり、篩骨迷路の前部を構成する重要な解剖学的ランドマークです。この構造は中鼻道の形成に不可欠であり、副鼻腔の換気および排泄経路において中心的な役割を果たします(Stammberger and Hawke, 1993)。鈎状突起の解剖学的位置および形態的特徴は、臨床医学、特に鼻内視鏡手術において極めて重要な指標となります(Messerklinger, 1978)。
解剖学的特徴
起始と走行
鈎状突起は篩骨迷路の前下部、具体的には中鼻甲介の前端部(篩骨蜂巣の前方領域)から発生します。この構造は前上方から後下方へと斜めに走行する薄い板状構造であり、その厚さは通常1mm未満、長さは約15-20mm、幅は約2-4mmとされています(Landsberg and Friedman, 2001)。
鈎状突起は篩骨胞(bulla ethmoidalis)の前下方と下鼻甲介の上方との間の狭い空間を通過し、後下方へと延びていきます(Kennedy and Zinreich, 1988)。この走行により、鈎状突起は篩骨漏斗(infundibulum ethmoidale)の前内側壁を形成し、中鼻道の解剖学的構造を決定づけます。
終止部と接合様式
鈎状突起の下端(終止部)は通常、下鼻甲介、上顎骨、または口蓋骨のいずれかに接合します。この接合パターンには顕著な個人差があり、形態分類の基礎となります(Stammberger, 1991)。
Turgut et al.(2005)による詳細な解剖学的研究では、接合様式により以下の4つの基本型と複数の変異型に分類されています:
- I型(34.6%):最も一般的な形態。下後端が下鼻甲介の前端部と接合します。この型では篩骨漏斗が比較的広く、副鼻腔の換気が良好です。
- I-b亜型:下鼻甲介および口蓋骨の両方と接合する変異型。I型の亜型として分類され、篩骨漏斗の形態に影響を与えます。
- N型:口蓋骨のみと接合する形態。この型では鈎状突起がより後下方に延長しており、篩骨漏斗の形態が変化します。
- S型:上顎骨と接合する形態。この接合様式では、鈎状突起が上顎洞の自然口の前縁を形成し、上顎洞の換気に直接影響を与えます。
形態的変異
鈎状突起には顕著な形態的変異が存在します。主な変異には以下が含まれます:
- 気泡化(pneumatization):鈎状突起内に気房が形成される状態で、約2-10%の頻度で見られます。気泡化した鈎状突起は「concha bullosa of uncinate process」と呼ばれ、篩骨漏斗を狭窄させる原因となります。
- 湾曲の程度:鈎状突起の湾曲は個人により大きく異なり、内側湾曲型、外側湾曲型、S字状湾曲型などがあります。過度の内側湾曲は篩骨漏斗を狭窄させ、副鼻腔の排泄障害を引き起こす可能性があります。
- 付着様式の変異:鈎状突起の上端が篩骨胞の前壁、中鼻甲介の基部、または篩骨天蓋のいずれに付着するかによって、前頭洞の排泄路が異なります。
周囲構造との関係