上腕 Brachium

J0935 (右上腕の表面神経:前方からの図)

J0937 (右上腕の皮神経、外側後方からの図)

J0939 (右上腕の神経幹:内側からの図)

J0940 (右上腕の筋神経:前方からの筋)

J0947 (右上腕の筋神経:後方からの図)
上腕(brachium)とは、解剖学的に肩関節(肩甲上腕関節)から肘関節までの部分を指します。この領域は主に上腕骨を中心とした構造からなり、周囲には重要な筋肉、血管、神経が配置されています(Gray, 2020; Netter, 2018)。
解剖学的構造
1. 骨格
上腕骨(humerus)が主要骨格を形成し、近位端は肩甲骨の関節窩(glenoid cavity)と肩甲上腕関節を形成し、遠位端は橈骨および尺骨と肘関節を構成します(Moore et al., 2022)。上腕骨は長管骨であり、骨幹部には橈骨神経溝が存在し、橈骨神経と上腕深動脈が走行します(Standring, 2021)。
2. 筋肉
上腕の筋肉は前面と後面に区分されます。
- 前面の筋群:上腕二頭筋(biceps brachii)は二つの起始部(長頭と短頭)を持ち、主に肘関節の屈曲と前腕の回外に作用します(Moore et al., 2022)。上腕筋(brachialis)は上腕二頭筋の深層に位置し、肘関節の強力な屈筋として機能します(Standring, 2021)。烏口腕筋(coracobrachialis)は上腕の内転と屈曲に関与します(Gray, 2020)。
- 後面の筋群:上腕三頭筋(triceps brachii)は三つの頭(長頭、外側頭、内側頭)から構成され、肘関節の伸展を担います(Netter, 2018)。橈骨神経によって支配され、上腕後面の主要な筋量を占めます(Moore et al., 2022)。
3. 神経
上腕には腕神経叢から分岐した主要な神経が通過します。
- 筋皮神経(n. musculocutaneus):烏口腕筋を貫通し、上腕二頭筋と上腕筋を支配した後、外側前腕皮神経として前腕外側の感覚を担います(Chung and Yang, 2019)。
- 正中神経(n. medianus):上腕動脈に伴走し、上腕では通常筋枝を出さず、前腕と手の運動・感覚を支配します(Moore et al., 2022)。
- 尺骨神経(n. ulnaris):上腕内側を下行し、上腕中部で内側筋間中隔を貫通して後区画に入り、上腕骨内側上顆の後方を通過します(Standring, 2021)。
- 橈骨神経(n. radialis):上腕後面の橈骨神経溝を螺旋状に走行し、上腕三頭筋を支配します。上腕骨骨幹部骨折の際に損傷を受けやすい部位です(Holstein and Lewis, 1963)。
4. 血管
上腕の血管系は動脈系と静脈系から構成されます。
- 動脈系:上腕動脈(a. brachialis)は腋窩動脈の続きとして大円筋下縁から始まり、上腕内側を下行し、肘窩で橈骨動脈と尺骨動脈に分岐します(Gray, 2020)。上腕深動脈(a. profunda brachii)は上腕動脈から分岐し、橈骨神経とともに橈骨神経溝を走行し、上腕三頭筋と上腕後面の皮膚に血液を供給します(Tubbs et al., 2019)。
- 静脈系:深静脈は動脈に伴走します。表在静脈としては、尺側皮静脈(v. basilica)が上腕内側を上行し、上腕中部で深筋膜を貫通して上腕静脈に合流します。橈側皮静脈(v. cephalica)は上腕外側を上行し、三角筋胸筋溝を通って腋窩静脈に注ぎます(Moore et al., 2022)。