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片山正輝

目次(V. 神経系)

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胸神経の前枝は肋間神経Nn. intercostalesとも呼ばれる。上位11対の前枝のみが(胸郭を形成する肋骨との関係において)実際に肋間隙に存在し、第12対目の前枝は最下位の肋骨の下方にあるため、肋下神経N. subcostalisと呼ばれる。

第1~第6肋間神経のみが肋間隙を完全に走行して胸骨縁に達する。第7~第12肋間神経は肋間隙の前端で終わらず、そこを越えて腹壁に入り、白線付近まで達する。白線は腹部における一種の胸骨Abdominalsternumと考えられる。第7~第9肋間神経が腹壁に達するには、上昇方向をとる肋軟骨の内面と交差しなければならない。上部の肋間神経はほぼ水平に進み、下部のものは肋骨の扇形の放散に合わせて、より下方に向かって走行する。

第12肋間神経を除くすべての肋間神経は、後枝から分岐した後、内肋横突靱帯の前方で外肋間筋の内面上を、その属する肋間隙内を走行する。脊柱から肋骨角までは内肋間筋が存在しないため、この範囲では肋間神経は胸内筋膜と胸膜の肋椎部のみに覆われる。内肋間筋が始まると、これらの神経は内肋間筋と外肋間筋の間に位置する。肋間神経は最初、肋間隙の上縁に沿って走行するが、徐々にこの隙の中央部に近づく。肋間動静脈に伴走し、これらの血管が肋骨溝内にあり、肋間神経はその下方に位置する。第1と第2肋間神経は部分的にその属する肋骨の内面にも存在する。最下位の肋間神経は腰方形筋の前面上にある。第7~第11肋間神経は横隔膜肋骨部の尖端間を通過して腹壁の筋肉内に入り、第12肋間神経も同様に腹横筋と内腹斜筋の間を走行する。

肋間神経が分布する筋は以下の通りである:内肋間筋、外肋間筋、肋下筋、胸横筋、長短両横突肋骨筋、上後鋸筋、下後鋸筋、3つの広範囲腹筋、腹直筋、錐体筋。

肋間神経が分布する広範な皮膚領域は、後方は胸部の背腹境界線により(2. 胸神経12対の後枝 Die dorsalen Äste der zwölf Thorakalnerven 参照)、前方は正中線により境界される。胸部上部の皮膚は頚神経叢からの分枝(鎖骨上神経)を受ける。また鼡径靱帯上方の細長い皮膚領域と恥丘部は腰神経の支配域に属する。

この皮膚領域に分布するのは2列に並んだ皮枝である:1. 外側の太い枝、すなわち外側皮枝Rami cutanei lateralesの1列、2. 前方の正中線近くにある細い枝、すなわち前皮枝Rami cutanei ventralesの1列である。

各肋間神経は1本ずつの外側皮枝と前皮枝を送出する。第1肋間神経のみ、その外側皮枝が腕神経叢の第5根を形成していない場合、通常この枝を持たない。この第5根は第1肋骨を越えて進む。第2肋間神経の外側皮枝の一部は5. 尺側上腕皮神経 N. cutaneus brachii ulnaris で述べた肋間上腕神経である。第3肋間神経までが尺側上腕皮神経と結合することがある。前皮枝はすべての肋間神経に存在するが、第1肋間神経のみ時に欠如することがある。腹壁を貫通する前皮枝が2本以上あることは珍しくない。またその出現位置がしばしば不規則である(図549(胸神経および上部腰神経の前枝の分布) 参照)。

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図549(胸神経および上部腰神経の前枝の分布)

a) 肋間神経の結合 Verbindungen der Interkostalnerven

b) 肋間神経の枝 Äste der Interkostalnerven

腰仙骨神経叢 Plexus lumbosacralis, Beingeflecht