https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
舌背の粘膜は前方の大きい部分と後方の比較的小さい部分に区別できる。前者は硬口蓋と軟口蓋に、後者は咽頭に向かっている。
これらは前舌Vorderzungeと後舌Hinterzungeと呼ばれ、その境界を示すのは正中線上にある深さの不定なくぼみ、すなわち舌盲孔Foramen caecum linguaeである。この孔に続く短い管を舌管Ductus lingualisといい、複数の舌腺の導管がここに開口している。前後両舌部の境界としてさらに、舌盲孔から左右それぞれ1本の溝が前外側に走り、これを舌の分界溝Sulcus terminalis linguaeと呼ぶ。また、浅い正中線上の溝である舌正中溝Sulcus medianus linguaeが前舌を表面的に左右対称に分けており、この溝は時に後舌でも明瞭に見られる。舌正中溝は舌体の内部を貫く正中線上の固い結合組織性の隔壁、すなわち舌中隔Septum linguae(図077(舌と咽頭の筋肉(II)))によって外面に生じたくぼみである。ただし、この結合組織性の中隔は舌背まで完全には達していない。後舌から喉頭蓋Kehldeckelに向かって、よく発達した3つのひだが走っている。正中線上にある最も顕著なものを正中舌喉頭蓋ヒダPlica glossoepiglottica medianaと呼び、外側に左右1つずつあるのを外側舌喉頭蓋ヒダPlicae glossoepiglotticae lateralesという。正中と外側のひだによって区切られた左右1つずつのくぼみを喉頭蓋谷Vallecula epiglotticaという。
舌の下面で口腔底から離れた部分の粘膜は薄く柔らかく、ここに正中面上の1つのひだがある。これを舌小帯Frenulum linguae, Zungenbändchen(図078(舌尖を上方に挙げ、舌下面と口腔底を観察))といい、下顎骨の内面を覆う粘膜との間に張られている。舌小帯の外側にはぎざぎざしたひだ、すなわち采状ヒダPlica fimbriataがある(図078(舌尖を上方に挙げ、舌下面と口腔底を観察))。これは一部の動物種(例えば擬猴類Halbaffen)でよく発達している下舌Unterzungeの遺物である。これに対し、上方にある大きい舌体は上舌Oberzungeに相当する。
なお、舌の粘膜には多数かつ多様な乳頭Papillenと腺が存在することが特徴的である。