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目次(V. 神経系) 、II. 脳 Encephalon, Gehirn
基本構造と発達
神経核の構成
発生と機能
菱脳は、「菱形」を意味するギリシャ語のrhombosと、encephalonを結合した言葉である。菱脳は、前脳、中脳、菱脳の3つの脳胞のうち、最も尾側に位置し、脊髄の頭側に続く後脳(橋と小脳)と尾側半の髄脳(=延髄)に分類される。菱脳の発生において特異なことは、第4週の終わりごろ(第12段階)から、蓋板が非常に薄くなり、左右に広がることである。この広く薄くなった蓋板を菱脳蓋と呼ぶ。菱脳蓋の幅は、菱脳の中央部(後脳と菱脳の移行部)で最も広く、頭側および尾側で次第に狭くなる。菱脳蓋は、全体として頭尾方向に細長い菱形となる。頭側の中脳との境界のくびれ(菱脳峡)は、第4週の中頃(第11段階)から認められる。蓋板の変化に伴い、最初は翼板と基板によって菱脳室の左右の壁を形成していたものが、外方に倒れていき、最終的には菱脳室の底を形成する。こうして、菱脳室は腹背に扁平で、頭尾に長く、左右に広い菱形の腔となり、第四脳室と呼ばれる。菱脳蓋は、外側から間葉組織によって裏打ちされ、第四脳室脈絡組織となる。翼板と基板では、胚芽層・外套層・縁帯の分化が起こり、外套層は神経細胞で充填される。これらの神経細胞は、一つの灰白柱を形成するのではなく、複数の灰白質塊に分かれる。このような灰白質塊(神経細胞の集団)を神経核と呼ぶ。翼板からは知覚性の、基板からは運動性の脳神経核が生じるが、これらの配列には整然とした規則性が見られる。基板においては、内側から外側に向かって、①頭部体節由来の骨格筋を支配する体運動核群(M1)、②鰓弓由来の骨格筋を支配する特殊内臓運動核群(M2)、③内臓の平滑筋や腺を支配する一般内臓運動核群(M3)が分化し、翼板においては、同様に①内臓からの求心線維を受け入れる一般内臓知覚核(S1)、②鰓弓領域に発する味覚線維を受け取る特殊内臓知覚核(S2)、③頭顔部の皮膚からの知覚線維を受け取る体知覚核(S3)と④内耳からの求心線維を受ける特殊体知覚核(S4)が分化する。基板および翼板からは、以上の諸核を形成するもののほかに、多数の神経細胞が発生する。これは特別な細胞集団を形成することなく、外套層の中に散在する。これらの神経突起は同側性および交叉性に上行・下行して、脳および脊髄の下腔に達する。このようにして、特定の神経核以外の部分では、外套層は交錯する神経線維の間に神経細胞が散在する状態となり、網様体と呼ばれる。また、交叉性神経線維はすべて底板の縁帯に満たされて著しく肥厚し、正中縫線となる。翼板と蓋板の移行部を菱脳唇と呼ぶ。後脳の菱脳唇は巨大に発育して小脳を形成する。髄脳の菱脳唇は多数の神経細胞を生じるが、これらは縁帯の中を腹内方に遊走し、基板の縁帯の中に大きい神経核を形成する。頭側部から生じた神経細胞は、後脳の腹側部に橋核、尾側部から生じたものは髄脳の腹側部にオリーブ核を形成する。菱脳は、心拍数、呼吸、平衡感覚など、多くの重要な機能を制御しています。