乳頭層(真皮の)Stratum papillare dermis

真皮の乳頭層は、真皮の柔らかい上層であり、多数の乳頭突起を介して表皮と結合しています(McGrath et al., 2010)。この乳頭突起は指紋や足跡などの皮膚表面の特徴的なパターン形成に寄与しています。乳頭層の表面には、IV型コラーゲンやラミニンを主成分とする銀好性線維の網目である基底膜が存在し、これに表皮の基底層の細胞がヘミデスモソームという小さな足状構造を介して強固に付着しています(Burgeson and Christiano, 1997)。

組織学的特徴

乳頭層は網状層に比べて塩基性色素に濃く染まります。コラーゲン線維(主にIII型)や弾性線維が比較的疎で、ヒアルロン酸を含む細胞外マトリックス(基質)が豊富です(Uitto et al., 1989)。細いコラーゲン線維や弾性線維がさまざまな方向に走行していますが、表皮に対して垂直方向に配列する傾向があります(Naylor et al., 2011)。

血管・神経支配

乳頭層には毛細血管ループを形成する微小血管が豊富に存在し、皮膚の栄養供給や体温調節において重要な役割を果たしています(Braverman, 2000)。また、メルケル触盤やマイスナー小体などの感覚受容器、自由神経終末が多く分布しており、触覚・圧覚・温度覚などの知覚機能を担っています(Zimmerman et al., 2014)。

臨床的意義

真皮乳頭層の構造異常は様々な皮膚疾患と関連しています。例えば、膠原病(強皮症など)では乳頭層の線維化が進行し、皮膚硬化や毛細血管ループの変形が生じます(Fleischmajer et al., 1991)。また、水疱性疾患(表皮水疱症など)では基底膜構造の異常により表皮-真皮間の接着が障害され、わずかな機械的刺激でも表皮剥離が起こります(Fine et al., 2008)。さらに、糖尿病性細小血管障害では乳頭層の毛細血管に構造変化が生じ、創傷治癒の遅延や皮膚感染症のリスク増加に繋がります(Dinh and Veves, 2005)。

参考文献

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J1076 (足底の表皮乳頭)

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J1083 (足底の皮膚の血管の分布は、階段状に作られたモデルで示されています)

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J1084 (真皮の乳頭層の血管分布)