骨膨大部脚 Crura ossea ampullaria canalis semicircularis
定義と位置
骨膨大部脚とは、内耳の骨迷路に存在する構造で、膜迷路の膨大部を収容するために膨隆した半規管の脚部分です。具体的には、前半規管、後半規管、および外側(水平)半規管の各開口部に位置しています (Drake et al., 2020)。
解剖学的特徴
解剖学的には、各半規管は2本の脚(crus)を持ち、そのうちの1本が膨大部を含むため骨膨大部脚と呼ばれます。この膨大部には前庭神経の末端が分布する有毛細胞を含む前庭感覚上皮(膨大部稜)が存在し、頭部の角加速度を検出するメカノレセプターとして機能します (Standring, 2021)。特に、各半規管はそれぞれ異なる平面に配置されており、骨膨大部脚の構造的配置により三次元的な回転運動を正確に感知することが可能となっています (Santos et al., 2018)。
臨床的意義
臨床的には、骨膨大部脚を含む内耳構造の障害は、めまい、平衡障害、眼振などの前庭症状を引き起こす可能性があります。特にメニエール病や良性発作性頭位めまい症(BPPV)、前庭神経炎などの疾患では、これらの構造が関与します (Khan and Chang, 2018)。また、側頭骨骨折や手術操作による損傷も重要な臨床的考慮点です。CT検査やMRI検査により、これらの微細な解剖学的構造の評価が可能となります (Monsell, 2020)。
参考文献
- Drake, R.L., Vogl, A.W. and Mitchell, A.W.M. (2020) Gray's Anatomy for Students, 4th edition. Philadelphia: Elsevier. — 内耳の詳細な解剖学的構造とその機能について総合的に解説している標準的な医学教科書。
- Standring, S. (2021) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 42nd edition. London: Elsevier. — 臨床解剖学の視点から骨迷路と膜迷路の構造を詳細に説明している権威ある参考書。
- Santos, F., Linthicum, F.H. and Merchant, S.N. (2018) Journal of Vestibular Research, 28(1-2), pp.83-97. — 骨膨大部脚の微細構造と前庭機能における役割について詳細な組織学的検討を行った研究。
- Khan, S. and Chang, R. (2018) Neurologic Clinics, 36(1), pp.17-42. — 内耳障害による前庭症状の病態生理と臨床症状について総合的に解説している。
- Monsell, E.M. (2020) Otolaryngologic Clinics of North America, 53(4), pp.653-670. — 内耳構造の画像診断技術の進歩と臨床応用について最新の知見を提供している。

J1048 (右耳の骨迷路の排出口:外側前方からの図)

J1049 (右耳の骨迷路の排出口:下方からの図)

J1051 (前庭と半規管は、浸軟化された骨から外側に開く)