外側半規管隆起 Prominentia canalis semicircularis lateralis

J0030 (右の側頭骨:切断、外側部を削り取って鼓室とその周囲を示す図)

J0916 (右顔面神経および鼓室神経叢:前方からの図)

J1042 (右の鼓室の内側壁:外側からの図)

J1052 (浸軟化した骨にある右の蝸牛、外側から開放)

J1056 (右側の側頭骨を垂直に切断し、外側の切断面を内側からの図)
定義と概要
外側半規管隆起は、中耳腔の内側壁(鼓室内側壁)に認められる骨性の隆起構造であり、その内部を外側半規管(水平半規管)が走行することによって形成される。この構造は内耳と中耳の解剖学的境界を示す重要な指標であり、耳科手術における重要なランドマークとして機能する(Schuknecht and Gulya, 2010)。
解剖学的特徴
位置と形態
- 位置:鼓室内側壁の後上部に位置し、顔面神経管隆起(prominentia canalis facialis)の直上に認められる。前庭窓(卵円窓)の後上方約2〜3mmに位置する(Gulya et al., 2020)。
- 形態:約2〜3mmの幅を持つ滑らかな弓状の骨性隆起として観察される。この隆起は外側半規管(水平半規管)が中耳腔方向に突出することによって形成される(Proctor, 2019)。
- 大きさ:個体差があるが、通常の隆起の高さは1〜2mm程度である。隆起が顕著な場合、手術時の損傷リスクが高まる(Sanna et al., 2016)。
- 表面:隆起表面は薄い骨層で覆われており、この骨層の厚さは0.5〜1mm程度である。慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎では、この骨層が吸収されて菲薄化または欠損することがある(Merchant and Rosowski, 2010)。
内部構造
- 骨迷路:隆起内部には骨迷路の一部である外側半規管が含まれる。骨迷路は緻密骨で構成され、その内径は約1.5mm程度である(Lo et al., 2017)。
- 膜迷路:骨迷路の内部には膜迷路である外側半規管が存在し、その内腔には内リンパ液が満たされている。膜迷路と骨迷路の間には外リンパ腔が存在する(Sanna et al., 2016)。
- 膨大部:外側半規管の前端部には膨大部(ampulla)が存在し、ここに感覚器である膨大部稜(crista ampullaris)が位置する(Hain and Helminski, 2014)。
- 組織学的構造:骨迷路を構成する骨は耳嚢骨(otic capsule bone)と呼ばれ、通常の骨よりも高密度で、骨改造(bone remodeling)がほとんど起こらない特殊な骨である(Carlson, 2018)。
解剖学的関係
- 上方:上鼓室(epitympanum、上鼓室窩)と隣接し、ツチ骨頭およびキヌタ骨体が位置する。鼓室天蓋(tegmen tympani)を介して中頭蓋窩底と接する(Marchioni et al., 2018)。
- 前下方:前庭窓(卵円窓、fenestra vestibuli)が位置し、アブミ骨底板がこの窓を閉鎖している。前庭窓を介して前庭と連絡する(Mansour et al., 2019)。
- 後方:顔面神経管の垂直部(鼓室部)が走行し、顔面神経が下行する。外側半規管と顔面神経の位置関係は手術時に重要である(De Foer et al., 2010)。
- 内側:前庭(vestibulum)と連続し、三半規管系の一部を構成する。前庭には球形嚢(saccule)と卵形嚢(utricle)が位置する(Curtin, 2003)。