奇静脈 Vena azygos
奇静脈は、胸腹壁の後部および脊柱周囲からの静脈血を集める、重要な静脈系の一部です (Gray and Lewis, 2024)。以下に、解剖学的および臨床的な重要な特徴を詳述します。

J0548 (大きな心臓血管の位置:腹面図)

J0618 (縦隔胸部の静脈、腹面図)

J0685 (食道と気管とその周囲:前方からの図)

J0758 (右の胸腔と縦隔、肺および胸膜の除去:右側からの図)

J0761 (胸骨を通る水平断面:上方からの図)

J0828 (脊椎と筋の断面図)
解剖学的特徴
走行経路
- 起始部:第1-2腰椎レベルで、右上行腰静脈(時に後主静脈)から始まります (Standring, 2023)。
- 主幹部:第12胸椎レベルで、大動脈裂孔の外側を通り、胸腔内に入ります (Standring, 2023)。
- 終末部:第4胸椎レベルで、奇静脈弓(azygos arch)を形成し、上大静脈に合流します (Moore et al., 2023; Netter, 2023)。
主要な流入静脈
- 右後肋間静脈(4-11本):胸壁からの静脈血を集めます (Moore et al., 2023)。
- 半奇静脈:左側からの静脈血を集める重要な支流です (Standring, 2023)。
- 食道静脈、気管支静脈、心膜静脈なども流入します (Gray and Lewis, 2024)。
臨床的意義
側副血行路としての重要性
- 上大静脈症候群での代替血行路として機能します (Kumar and Robbins, 2023)。
- 下大静脈閉塞時の側副路としても重要な役割を果たします (Moore et al., 2023)。
画像診断での特徴
- 胸部X線写真では、右上縦隔陰影の外側縁として確認できます (Webb et al., 2024)。
- CT検査では、造影剤による明瞭な描出が可能です (Webb et al., 2024)。
奇静脈系の解剖学的変異は頻繁に認められ、特に半奇静脈との交通パターンには、個体差が大きいことが知られています (Netter, 2023)。また、「奇」(Azygos)という名称は、この静脈が対をなさない(unpaired)という特徴に由来しています (Gray and Lewis, 2024)。これらの解剖学的知識は、胸部手術や血管造影検査において、重要な意義を持ちます (Moore et al., 2023)。