大動脈 Aorta

大動脈は、体循環系の主要な部分を形成する単一の太い動脈です。直径約2.5-3.5cm、長さ約40cmあり、酸素化された血液を心臓から全身に運ぶ役割を担っています(Gray, 2020)。解剖学的に以下のように分類されます:

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J0434 (横隔膜:腰部、腹腔からの図)

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J0536 (右心室の心房室束とその分岐)

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J0537 (左心室における房室束とその分岐)

胸大動脈と腹大動脈は合わせて下行大動脈(Descending aorta)とも呼ばれます。大動脈壁は弾性組織に富み、心臓の拍出に対応して拡張・収縮する特性を持っています(Netter, 2018)。

解剖学的構造

1. 上行大動脈(Ascending aorta)

上行大動脈は左心室の大動脈口から始まり、長さ約5cm、直径約3cmです。起始部には大動脈弁(三尖の半月弁)があり、心室収縮期に開き、拡張期に閉じることで血液の逆流を防ぎます(Standring, 2021)。大動脈弁は3つの半月弁尖(右冠尖、左冠尖、無冠尖)から構成され、各弁尖の基部には大動脈洞(バルサルバ洞、Sinus of Valsalva)が形成されます。

右冠尖と左冠尖に対応する大動脈洞から、それぞれ右冠状動脈と左冠状動脈が分岐します。これらは心筋への唯一の血液供給源であり、冠動脈疾患の主要な病変部位となります(Moore et al., 2019)。上行大動脈は心膜腔内に位置し、上方では第2肋軟骨の高さで大動脈弓に移行します。

2. 大動脈弓(Aortic arch)

大動脈弓は上行大動脈から続き、左後方へ弓状に走行して第4胸椎の高さで下行大動脈に移行します。弓の凸側(上面)からは3本の主要な分枝が前方から順に分岐します(Standring, 2021):

大動脈弓の凹側(下面)は気管分岐部、左主気管支、肺動脈幹と隣接し、大動脈弓下面と肺動脈幹の間には動脈管索(ligamentum arteriosum)が走行します。これは胎生期の動脈管の遺残組織です(Moore et al., 2019)。

3. 下行大動脈(Descending aorta)

下行大動脈は胸大動脈と腹大動脈の2部に分けられます。