気管支 Bronchi

気管支は第4胸椎の高さにある気管分岐部(carina)から発生し、肺門に至る部分を主気管支(bronchus principalis)と呼びます(Gray, 2020)。左右の分岐角度は平均70度で、右主気管支は鉛直線に対して20~40度とほぼ直下に向かい、左主気管支は40~60度とより水平方向に走行します。この解剖学的特徴により、誤嚥した異物は右主気管支に入りやすく、特に小児では臨床的に重要です(Netter, 2018)。右側の気管支は太く短い(約3cm)ため、気道閉塞のリスクが高く、左側の気管支は右よりやや細く長い(5~6cm)ため、気管支鏡検査ではアクセスに注意が必要です。気管支軟骨の数は、右が6~8個、左が9~12個であり、これらの軟骨輪は不完全で、後方は膜性部となっています(Moore et al., 2019)。粘膜下組織には気管と同じ組成の気管支腺が存在し、慢性気管支炎では過形成が見られます。

気管支の分岐構造

気管支は枝分かれするにつれて構造と名前が変わります。主気管支から葉気管支(bronchi lobares)へ、次に区域気管支(bronchi segmentales)へ、そして亜区域気管支(rami bronchiales subsegmentales)へと分岐します(Standring, 2021)。これらの分岐パターンは気管支鏡検査や胸部CTの読影に不可欠です。更に分岐すると、組織学的な変化が生じ、細気管支(bronchioli、直径1mm未満)となり軟骨を失います。これが慢性閉塞性肺疾患(COPD)で閉塞が起こりやすい部位です(Kumar et al., 2018)。

末梢気道と肺胞

終末細気管支(bronchioli terminales)、それから肺胞構造を持ち始める呼吸細気管支(bronchioli respiratorii)へと続きます。呼吸細気管支は肺胞管(ductuli alveolares)へ分岐し、次に肺胞嚢(sacculi alveolares)を経て、最終的にガス交換の場である肺胞(alveoli)に至ります(West, 2019)。肉眼解剖では、終末細気管支までの部分を剖出することが可能です。肺区域切除や肺葉切除などの手術においては、これらの気管支の分岐パターンを理解することが不可欠です。

参考文献

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J0751 (気管とその右気管支の走行:右側からの図、半分は図式図)

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J0753 (気管とその枝の鋳造:前方からの図)

日本人のからだ(村上 弦 2000)によると