輪状軟骨板 Lamina cartilaginis cricoideae

J0731 (輪状軟骨:後方からの図)

J0732 (輪状軟骨:右側からの図)

J0736 (喉頭とその靭帯:後方からの図)

J0740 (喉頭筋:後方からの図)

J0744 (喉頭の正中断、右半分:左方からの図)
1. 解剖学的構造と発生学的背景
輪状軟骨板(lamina cartilaginis cricoideae)は、喉頭を構成する輪状軟骨の後方部分を形成する四角形の板状構造である。発生学的には気管軟骨の最上部が拡大・変形したものであり、喉頭の骨格的土台として機能する(Gray, 2020)。輪状軟骨は喉頭軟骨の中で唯一の完全な軟骨輪を形成し、前方は輪(弓)状部(arcus cartilaginis cricoideae)、後方は板状部に分けられる。この構造により、気道の開存性が維持され、呼吸機能の基盤となっている(Standring, 2021)。
2. 形態学的特徴と関節構造
輪状軟骨板は高さ約2〜3cm、幅約3cmの比較的厚い板状構造を呈する。後面には披裂軟骨との関節面である関節小面(facies articularis arytenoidea)が左右に存在し、これは輪状披裂関節(articulatio cricoarytenoidea)を形成する。この滑膜性関節を介して披裂軟骨が回転および滑走運動を行い、声帯の緊張度および声門裂の幅が精密に調節される(Standring, 2021)。また、輪状軟骨板の上縁中央部は浅い切痕を形成しており、これは喉頭鏡検査時の解剖学的指標となる。
3. 臨床的意義
臨床的には、輪状軟骨板は以下の重要な意義を持つ:
- 内視鏡検査の指標:輪状軟骨板は食道との境界に位置するため、咽頭・食道異物の嵌頓部位の同定や内視鏡検査における重要な解剖学的目印となる(Netter, 2019)。
- 声門開大機構:後輪状披裂筋(musculus cricoarytenoideus posterior)の起始部となり、この筋肉は声門を開大させる唯一の内喉頭筋として臨床上極めて重要である。両側性の反回神経麻痺が生じた場合、この筋肉の機能不全により声門開大障害をきたし、呼吸困難を引き起こす可能性がある(Sataloff, 2022)。
- 嚥下機能との関連:輪状咽頭筋(musculus cricopharyngeus)が輪状軟骨板の外側面に付着し、上部食道括約筋として機能する。輪状咽頭筋弛緩不全が起こると、食道入口部の通過障害が生じ、Zenker憩室などの病態を引き起こす可能性がある(Sataloff, 2022)。
4. 参考文献
- Gray, H. (2020) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 42nd Edition. Elsevier. → 解剖学の標準的教科書として、輪状軟骨の詳細な構造と機能を記載。
- Moore, K.L. and Dalley, A.F. (2018) Clinically Oriented Anatomy, 8th Edition. Wolters Kluwer. → 臨床志向の解剖学教科書として、実践的な解剖学的知識を提供。
- Netter, F.H. (2019) Atlas of Human Anatomy, 7th Edition. Elsevier. → 視覚的に優れた解剖図譜として、喉頭軟骨の立体的理解を提供。
- Sataloff, R.T. (2022) Professional Voice: The Science and Art of Clinical Care, 4th Edition. Plural Publishing. → 音声医学の専門書として、喉頭筋の臨床的重要性を解説。
- Standring, S. (2021) Gray's Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 43rd Edition. Elsevier. → 最新版のGray解剖学書として、輪状披裂関節の機能解剖を詳述。
東洋医学との関連性